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[18]魔球のシンカーを操る倉敷商・西にも注目だ

守田直樹 フリーライター

 変化球の「シンカー」と聞けば、潮崎哲也(元西武)や高津臣吾(元ヤクルト、現BCリーグ・新潟アルビレックス)を思い出す方も多いだろう。「SINK=沈む」のとおり、右腕なら左バッターのアウトコースに逃げながら沈む変化球だ。シュート回転しながら落ちるボールとされる。アンダーやサイドの投手が使うことが多く、高津のシンカーはいったん浮き上がり、ストンと落ちるのが特徴だった。

 しかし、倉敷商のエース西隆聖が投げるシンカーはまったく違う。そもそも西はオーバースロー。その軌道などについて、西と対戦した打者は解説する。

「ボールが手を離れる瞬間と、途中までの軌道もストレートと同じなんです。浮くこともありません。でもボールが急にシュートして落ちるので、バットが止まらずつい振ってしまうんです」

拡大倉敷商の西隆聖

 たとえばフォークボールは人差し指と中指の間ではさみ、球の回転を減らして落とす。一方のシンカーは、一般の人には開きづらい中指と薬指の間から抜くように投げる。だが、西本人の感覚は微妙に違うようだ。

「抜くというより、ボールをすべらせる感じです」

 中指でシュートさせるように「すべらせて」投げるため、より打者を幻惑できるようだ。森光淳郎監督も太鼓判を押す。

「高校生投手だと変化球で腕の振りがゆるくなったり、抜いたような感じになるものですが、彼の場合はまったく同じで腕をしっかり振れます。指先の器用さも天性ものでしょう」

 西の指は、あたかもピアニストのように細く、長い。あのダルビッシュ有(レンジャーズ)も指が長く、いとも簡単に指先ひとつでいろんな変化球を操ることはよく知られている。西のストレートは最速140キロに満たないものの変化球を投げることについては天賦の才にめぐまれている。シンカーも中学2年でマスターしている。

「いきなり試合で使ってみて、はまったので投げるようになりました」

 高校2年の終わりごろには、ストライクをとるシンカーと勝負球のシンカーの2種類を投げ分けるようになった。勝負球のシンカーは深く握り、変化も大きくしている。

 しかし今春のセンバツでは、作新学院(栃木)の右打者にシンカーをとらえられた。3対7で敗退。先発メンバーの6人の右打者に、被安打11のうち10本を打たれた。

「左打者には打たれる気がしない」

 自信をもつシンカーだが、右打者の死球になりやすいのが泣きどころ。内角を突くには、絶対的なコントロールの自信が必要になる。

「センバツ後には、ブルペンでもプロテクターをつけた選手に打席に立ってもらうようにしました。シンカーを右打者のインコースにも投げられるようになりました」

 今夏、3回戦の秋田商戦では左打者にはヒットを許さず1失点完投勝利。右打者にもシンカーを駆使し、2試合連続2桁の10個の三振を奪った。

「2ケタ三振で無四死球は初めてです。これまでで最高のピッチングでした」

 西は2種類のシンカーや、逆に曲がるスライダーやカットボール、大きなカーブなども持っているため「七色の変化球を操る」と言われる。

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筆者

守田直樹

守田直樹(もりた・なおき) フリーライター

1968年、山口県生まれのフリーライター。野球と日本酒と天然温泉が大好きな趣味人。共著に『横浜vs.PL学園』(朝日文庫)など。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです