西岡研介
2012年09月20日
「ぬちがふぅ(命果報)――玉砕場からの証言」
「ぬちがふぅ」とは、ウチナーグチ(沖縄言葉)で「命あらばこそ」、あるいは「死なないでよかった」という意味。太平洋戦争末期の沖縄戦での「集団自決」から生き残った住民ら27人の証言を集めたドキュメンタリーである。
監督は朴壽南(パク・スナム)氏(76歳)、三重県出身の在日二世だ。1958年の「小松川事件」事件で、女子高校生らを殺害した在日少年死刑囚との往復書簡をまとめた「罪と死と愛と」(三一新書)の著者としても知られる。
その後、映像の世界に移り、87年、広島の朝鮮人被爆者の存在に光を当て、彼らの証言を集めた「もうひとつのヒロシマ-アリランのうた」を発表。91年には、沖縄戦での「朝鮮人軍属」や「慰安婦」の足跡を追った「アリランのうた-オキナワからの証言」を公開し、今回の「ぬちがふぅ」は、これら「アリランのうた」三部作の完結編ともいえる作品だ。
去る9月7日、大阪での公開(10月13~19日)に先駆けて行われた試写会で、この「ぬがちふぅ」を鑑賞した。
作品の主な舞台はその昔、「ニライカナイ(理想郷)の島」といわれ、1945年3月末、米軍が初めて上陸した沖縄の慶良間諸島(座間味島や渡嘉敷島など大小20余りの島からなる島嶼群)。
映画の中では、息をのむような美しい自然を背景に、それとは対照的な、沖縄戦当時の凄惨な体験が、慶留間(げるま)島や座間味(ざまみ)島の住民らによって語られる。最愛の肉親によって命を絶たれそうになった、あるいは、肉親たちが兄弟姉妹を手にかける様子を目の当たりにした人々。しかし、それらの忌まわしい体験を証言する住民は誰も、当時の出来事を「集団自決」とは呼ばない。皆、軍命による「玉砕」と言うのだ。
その中の一人、日本兵から自殺用の青酸カリを渡されたという女性の言葉が今でも脳裏に焼き付いている。彼女はそれを渡された瞬間、こう思ったそうだ。
「今まで見たこともない綺麗な水だったね……」
住民の口からは、朝鮮から島に連れてこられた「慰安婦」の存在についても語
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