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残念だった香川欠場、イラク戦から見えるもの

潮智史

潮智史 朝日新聞編集委員

 11日のワールドカップ(W杯)ブラジル大会アジア最終予選で埼玉スタジアムに戸惑いにも似たどよめきが起きたのは先発メンバーが発表されたときだった。

 先発11人にも、控えメンバーにも香川の名前はなかった。メディア向けに香川が登録メンバー自体から外れることがアナウンスされたのはキックオフの約1時間ほど前。前日の練習で腰を痛めて、大事をとるという内容だった。

 結果からいけば、香川不在の影響はさほど感じなかった。前半のうちに1点を取っていたこともあって、選手も試合運びも落ち着いていた。

 香川の欠場が残念だったという程度の言葉で表現できるのは、勝ったからにほかならないが、本田と共存できるのかというテーマは先送りになった。

 試合前からスポーツ紙や専門誌では本田と香川の起用法を巡る記事が紙面をにぎわせていた。要約すると、FW1人を前線に置き、そのすぐ後方に配置するトップ下はどちらが適任か。ザッケローニ監督はこのポジションを本田に任せてきているが、ドイツのドルトムント、イングランドのマンチェスター・ユナイテッドで香川が高い評価を集めてきているのはまさにトップ下のポジションだからだ。ザッケローニ監督就任以来の2年を通して見ると、トップ下に入る本田の存在感は大きく、左サイドのFWの位置に入る香川はどこか窮屈そうに見えるのも確かなのだ。

 11日のイラク戦を香川が欠場したことが残念だったのは、ふたりの共存がいい意味で証明されていたのではないか、と思うからだ。

 かつて日本代表監督を務めたイラクのジーコ監督が採用した日本対策は相手の持ち味を消すという手だった。トップ下の本田には終始、特定のマンマークがつき、中央のMFの遠藤、長谷部にもわざわざFWが下がってきてマークに張りついた。攻め手が鈍ることを織り込んでも、日本の攻撃を抑えなければ勝ち目はないという考えだった。

 しつこいマークが自分につき、さらにパスの配球役である後方のMFを失う形となって、この日の本田がいつもの存在感を示す場面は激減した。それでも、強引に持ち込んでシュートを放つあたりがほかの選手にはない持ち味なのだけれど。

 話を戻すと、もしイラク戦で香川がいたら、窮屈な思いをしていた本田よりも存在感を示していただろうと思うのだ。同時に、ふたりが共存できるか

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