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【ニューヨークから】 経営が苦しいNHLアイスホッケーから日本は何を学ぶか

大坪正則 大坪正則(帝京大学経済学部経営学科教授)

 8月末、北米アイスホッケーリーグ(NHL)のコミッショナー、グレイ・ベットマン氏と会談を予定していたが、選手会との団体労働協約(CBA)についての交渉が大詰めに入ったため、面談できなかった。ニューヨーク・タイムズ紙はCBAの交渉状況を以下のように伝えていた。

(1)現行CBAの下で選手が受け取る収入配分は57%。これまでの交渉で、経営者が選手会に提示した選手の取り分は43%。

(2)経営者が8月28日に、契約期間6年、選手取り分を46%とする修正案を選手会に提示。8月31日を選手会の回答期限とし、これを選手会が受諾しなければ、9月15日からのロックアウトを示唆。

(3)8月31日、選手会が経営者の修正案を拒否。

 その後、労使交渉が断続的に行われたが、双方の溝を埋めることができず、9月16日から経営者がロックアウトに突入した。選手会は交渉の継続を主張したが、経営者は交渉の再開を予定していない。

 2011年の米国4大プロリーグでは、珍しいことにアメリカンフットボールのNFLが3月、バスケットボールのNBAが6月、NHLが9月、野球のMLBが12月に、CBAの契約期限が切れることになっていた。

 労使交渉の先陣に立ったNFLの経営者が契約終了後ただちにロックアウトを決めたので、一連の行使交渉は難航するとの見方が広まった。しかし、NFLがシーズン開始前に妥結し、その後のNBA、NHL、MLBは波乱なくシーズン開始を迎えた。

 他のリーグと同じくNHLの新CBAも合意済みと解されていたが、既存の契約が今年9月まで延長されたに過ぎなかった。

 2004―05年シーズンに、全試合を中止する犠牲を払ってまでCBAにサラリーキャップが組み入れられた。経費を固定化できたので、NHLの経営は安定すると思われた。経営に関する各種の数字を見ても不安要素はなさそうだった。例えば、以下のように、チケットの平均単価の比較では他の競争相手に引けを取っていない。

■2011-12年の平均単価(ドル)/2006-07年からの上昇率

ブロードウェイ 88.00/+15%

ディズニーランド 85.00/+35%

NFL 77.36/+24%

NHL 57.10/+26%

NBA 48.48/+3%

MLB 26.91/+25%

映画 7.94/+15%

 2011-12年の観客動員を見ても、動員数が2146万人、1試合平均1万7445人、平均観客席占拠率が昨シーズン比1.8%アップの95.0%であった。そして、2010-11年シーズン中に、NBCとの間に10年間で20億ドルの放送権契約を結び、ビールで有名なミラークアーズと7年間で3億7500万ドルのスポンサー契約を締結した。リーグ全体の収入も2006-07年の22億ドルから2011-12年には1.5倍の33億ドルに達した。

 一見、文句の付けようがない数字だが、メディアは他リーグと比較するので、オーナーやスポンサーから絶大な支持を得ているとはいえ、ベットマンコミッショナーに対する風当たりは相当厳しい。 

 NHLが苦戦する要因がテレビ放送権であることは周知の事実だ。誰もがアリーナの臨場感をテレビが表現できれば必ずNHLの人気は上昇すると口を揃えるが、デジタル・ハイビジョンになってもその効果が出ていないようだ。

 以下のように、4大プロリーグの契約内容を比較すると、 ・・・ログインして読む
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筆者

大坪正則

大坪正則(おおつぼ・まさのり) 大坪正則(帝京大学経済学部経営学科教授)

1947年生まれ。1970年、伊藤忠商事に入社。1981~85年まで、アメリカのニューヨークとデンバーに駐在。情報通信総合企画室などを経て 1986年、NBAプロジェクトマネジャーに。現在、帝京大学経済学部経営学科教授。専門はスポーツ経営学。著書に『パ・リーグがプロ野球を変える』『スポーツと国力』(以上、朝日新書)、『プロ野球は崩壊する!』(朝日新聞社)、『メジャー野球の経営学』(集英社新書)など。2014年3月4日、死去。

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