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【ニューヨークから】 日本の地上波でスポーツ番組が減る理由

大坪正則 大坪正則(帝京大学経済学部経営学科教授)

 スポーツ専門チャンネルESPNがメジャーリーグ(MLB)との2014~2021年の放送権を総額56億ドル(年平均7億ドル)で更新したと、ニューヨーク・タイムズ紙が報じた。年平均7億ドルは現行契約金額の約2倍だ。米国経済が急成長しているわけでもない環境下で、途轍もない権利料の高騰だ。

 ロンドン・オリンピックでも米国のNBCは、IOCが受け取った全放送権利料の半分以上となる空前の金額を払ったにもかかわらず、オリンピック放送で赤字を出すことはなかった。

 MLBにしても、他のプロスポーツリーグ(NBA、NFL、NHL)でも視聴率は決して上昇していない。地上波放送に加え、衛星放送の番組がケーブル局を通じて全国に流れるので、多チャンネルの下での視聴率競争が激しいからだ。当然、スポーツ番組の視聴率も下がっている。

 しかし、放送権利料は信じられないほど上昇している。いったい全体、米国のスポーツのテレビ放送権利料はどのようなメカニズムで上昇するのだろうか。

 片や日本のプロ野球。視聴率が下がるとズルズルと権利料が下がり、放送回数も減少。今やプロ野球のテレビ中継を地上波民放局でプライムタイムに見られることはほとんどなくなった。日本は米国と違って、どうしてスポーツ番組の権利料が下がってしまうのだろうか。日米の比較をするのは意義がありそうな気がする。

 なぜスポーツの放送権利料が上昇するのか、ニューヨークの友人に聞いた。その答えは、番組の商業的評価は視聴率ではなく「占拠率」で判断しているからだ、と明快だった。占拠率とは、同じ時間帯の視聴合計を100%として番組ごとに視聴割合を示したものだ。

 米国人は一般的に、見たい番組のみ視聴して、「ながら」でテレビを見ない。従って、占拠率を比較すれば同じ時間帯にどの番組が最も見られたかを正確に知ることができる。米国も日本同様、番組制作予算の低下が原因で視聴者が魅力を感じる番組が少なくなっている。

 そのため、相対的にスポーツ番組を見る機会が増えている。視聴率が低くてもスポーツ番組の占拠率は格別に高い。つまりスポーツは他の番組に比較して多くの人々に見てもらっているために、放送権利料が下がることなく、むしろ上昇傾向にあるというのだ。

 日本では相変わらず視聴率が重視され、占拠率は参考データ程度に扱われている。近年、景気悪化を受けて、民放各局が番組制作費を問答無用の形で削減したので、制作現場、特に下請け制作会社がその影響をもろに受けて安易な番組制作に走ってしまった。

 その結果、どの時間のどのチャンネルでも、ギャラの低いタレントをかき集めた変わり映えのしない同じような番組が放送されるようになった。かつて「1億総白痴化」とテレビが非難された時代があったが、今はそれ以上に深刻と言っても過言ではないかもしれない。

 こんな状況では、チャンネルの選択は番組の「質」ではなく、局のイメージに左右されやすい。昔と違って野球好きの親父がチャンネルを独占することもない。そのため、視聴率競争ではスポーツ番組が割を食うようになった。

 もう一つ注目すべきことがある。

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筆者

大坪正則

大坪正則(おおつぼ・まさのり) 大坪正則(帝京大学経済学部経営学科教授)

1947年生まれ。1970年、伊藤忠商事に入社。1981~85年まで、アメリカのニューヨークとデンバーに駐在。情報通信総合企画室などを経て 1986年、NBAプロジェクトマネジャーに。現在、帝京大学経済学部経営学科教授。専門はスポーツ経営学。著書に『パ・リーグがプロ野球を変える』『スポーツと国力』(以上、朝日新書)、『プロ野球は崩壊する!』(朝日新聞社)、『メジャー野球の経営学』(集英社新書)など。2014年3月4日、死去。

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