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サッカー界のライセンス制導入で、プロ野球は世界の異端児になる

大坪正則 大坪正則(帝京大学経済学部経営学科教授)

 読売ジャイアンツ(巨人)がリーグ優勝を遂げたが、巨人はスペインサッカーのレアル・マドリードやFCバルセロナ同様、リーグ内で断トツの戦力を保持しているので、優勝は当然のことだった。

 しかしながら、世界のプロスポーツ界は徐々に変わりつつある。果たして、巨人、レアル・マドリード、FCバルセロナの優勝が当たり前と言われるのはいつまで続くだろうか。

 さて、Jリーグが、申請をした全てのクラブに「ライセンス」を交付した。2013年度と14年度のシーズンを経過期間として、14年度決算時に債務超過または3期連続赤字のクラブは交付がとりやめになったり、降格になることもあり得る。この制度は、欧州では“financial fair play requirement”と呼ばれ、クラブの収支をイーブンにすることを目的に制度化されている。

 世界のスポーツ界には、異なる二つの経営手法が存在し、お互いが干渉しない形で存続してきた。二つの手法とは、「自由競争」(free competition)と「戦力の均衡」(competitive balance)を差す。

 「戦力の均衡」は米国プロリーグ経営の基本思想である。米国の経営者は、最大の収入と収益をあげるには戦力の均衡がベストの方法と考え、資本主義の国でありながら社会主義的な仕組みを取り入れてきた。

 戦力均衡策の最も顕著な例がテレビ放送権の一括管理(collective deal)だ。1962年、時のNFLコミッショナーのピート・ロゼール氏がCBSと史上初めて地上波放送の独占契約を結んだ時から始まった。同時に、この契約はコミッショナーの役割も変えた。従来のリーグ内の「裁判官」としての機能に、サラリーを配分する機能が加わったのだ。

 コミッショナーはテレビ放送権を核に全国市場を相手に権利の現金化を進めて、得た収入を全球団に均等に配分(revenue sharing)するようになり、「球団収入の均等化」が促進された。テレビ放送からの収入の割合が高まる現在、放送権の一括管理が経営安定化のために不可欠な制度になった。

 「自由競争」はサッカー界が採用している。イングランドに生まれたサッカーの経営では、アマチュア組織である国際サッカー連盟、大陸ごとの連盟、そして各国と地域の協会がプロのリーグとクラブを管理する仕組みを作っている。アマチュア組織はサッカーの普及に力を注いでおり、そのために資金が必要となる。

 そこで、必然的に、世界・大陸・国のレベルでの試合が開催されることになる。そうなれば、国境を越えたクラブ間の競争が最終目的になるので、自国内の「戦力の均衡」は意味のないものになる。リーグ内の優勝よりも大陸の覇者が、さらには世界一がより価値の高いものになるからだ。同時に収入も増える。しかし、自由競争はクラブ間に収入格差を生み、ひいては、赤字クラブを作り出すことになる。

 もちろん、クラブ経営の安定のためにリーグや各国政府が手をこまねいていたわけではない。

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筆者

大坪正則

大坪正則(おおつぼ・まさのり) 大坪正則(帝京大学経済学部経営学科教授)

1947年生まれ。1970年、伊藤忠商事に入社。1981~85年まで、アメリカのニューヨークとデンバーに駐在。情報通信総合企画室などを経て 1986年、NBAプロジェクトマネジャーに。現在、帝京大学経済学部経営学科教授。専門はスポーツ経営学。著書に『パ・リーグがプロ野球を変える』『スポーツと国力』(以上、朝日新書)、『プロ野球は崩壊する!』(朝日新聞社)、『メジャー野球の経営学』(集英社新書)など。2014年3月4日、死去。

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