聞き手=前田史郎(朝日新聞論説委員)
2012年10月19日
私が座長代理をしている大阪府市エネルギー戦略会議に橋下さん本人が出席したことがある。その直後は「2030年原発ゼロに向けて現実的なめどがついた」と語っていたが、内心では揺れているようだ。経産省や政財界の推進派の意見も聞き、まだ決断しきれていないのだろう。
精神論で「30年ゼロ」と言うだけではだめで、現実的な裏付けで証明できないと政策にはならない、というのが橋下さんの考え方だ。その現実的な裏付けを作るのが私たちの仕事。その結果を見て、橋下さんが「2030年ゼロ」といわざるをえない環境をいかにつくるか。それが大事だ。ただ、我々が出来たと思っても橋下さんが同じ考え方を持ってくれるかどうか。そこにはリスクが残る。
――自民党の安倍晋三総裁は脱原発派ではありません。「30年代ゼロ」という方向性も否定し、党内にも原発推進派の議員をたくさん抱えている。この状況で維新は自民党と組めるのですか。
たしかに維新の会には自民との連携を考えている人も多いと聞く。最後は橋下さんが仕切るが、橋下さん自身は自民との連立まで考えていないのではないか。自民は電力寄りだ。それに農業、医療、電力システム改革など、さまざまな政策で両者には違いがあり、対立する可能性がある。維新の方がよりラディカルだ。協力は政策ごとにとどまるのではないか。
衆院選で維新がある程度の議席をとっても参院に足場はない。仮に自民が政権を奪還しても民主を含む他党の協力を得て、すり寄りながら国会を運営しないと法案は通らない。その妥協の構図に巻き込まれると維新は埋没する。むしろ外にいて政策ごとに手を貸し、ぶれない政党を売りにしながら参院選にのぞむ方が得策だ。
――でも、このところ維新の会の人気に陰りが出ています。政策討論会で出た意見もばらばらで、肝心の維新自体が脱原発で一致できるのか疑問に思います。
維新に合流した9人の国会議員もこんなはずではなかったと焦っていると思う。世間は選挙目当てとしか見てくれない。最後は橋下さんがまとめていくしかない。私は維新は政策的に近いみんなの党と連携しない方がおかしいと考えている。あれだけ市場重視・競争重視で小さな政府を目指している一方で3・11の前から脱原発を主張し、再生可能エネルギーへのシフトを強調していた。そういう政党は他にない。みんなの党の政策は維新よりもはるかに具体的で先を行っているものが多い。
――原子力規制委員会が発足して原子力規制に関する国の新態勢もスタートした。さっそく規制委と政府の間で、原発の再稼働判断をめぐり押し付け合いが始まっています。
規制委は追いこまれている。安全の判断は自分たちがするが、政府が国民生活のために再稼働が必要と判断すれば、強行することもあるんでしょ、というのが規制委の立場だ。最後の判断の責任まではとらない、と規制委は言いたいわけだ。野田首相が
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