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政府の「女性皇族を残す論点整理」は、さらなる説明が必要だ

岩井克己

岩井克己 ジャーナリスト

 野田内閣は、女性皇族に結婚後も皇室の活動を支えてもらう方策について、12人の有識者からのヒアリングを踏まえた「論点整理」を先ごろ発表し、公開ヒアリングに入った。しかし、経過と「論点整理」や政治環境をみると、まだまだ機は熟したというにはほど遠く、さらなる説明が求められるように思われる。

 政府の「論点整理」は、方策を次のように三つに分類している。

 (Aー1)女性皇族が結婚後も皇族の身分を保持する。夫や子も皇族とする。

 (Aー2)女性皇族が結婚後も皇族の身分を保持する。夫や子は皇族としない。

 (B)女性皇族は結婚後は皇籍を離脱するが、皇室の活動を支援できるようにする。

  そして、すべて対象は内親王に限るーーというものだ。

 筆者は今年3月7日、本欄で「女性宮家の論点整理し『内親王家』創設の議論を」と題して論点整理を試みた。皇位継承権が絡むとの誤解を生む「女性宮家」の呼称は避け、皇位継承権のない1代限りの「内親王家」と呼ぶべきだとして、そのパターンを次のように三つに分けた。

 【1】結婚後、現制度通り皇室を離れ、夫君の戸籍に入るが、「内親王」の称号は維持してもらう形。戦前の旧皇室典範では認められていた。

 【2】結婚後も内親王は皇族に残り、夫君やお子さんは皇族としない形。

【3】結婚後は内親王の皇統譜に夫君が皇族として入り、お子さまも皇族となるが、お子さまは男女にかかわらず結婚したら皇室を出て一般国民になる形。

 今回の政府の論点整理は、順番が逆になっただけで骨子は同じであり、また「女性宮家」の呼称は使わない形をとっているので、筆者としては、おおむね納得できる。

 ただ、【1】で示した「内親王」称号付与案については、政府の(B)案では結婚後の「内親王」称号の付与は「困難」として却下し、身分は国家公務員とするとした。大方に「意外」あるいは「不自然な整理」と受け取られたのではないか。早くも男系重視派の国会議員らから「公務員とは失礼だ」などと反発の声もあがっている。ヒアリングを受けた有識者の意見表明ではほとんど出ていなかった判断を政府側から付け加えた形だからだ。有識者の人たちも少なからず当惑したのではないだろうか。

 誤解があればお許し願いたいが、12人の有識者が、称号付与案についてヒアリングでどんな立場を表明していたかを筆者なりに分類してみよう。

・積極的支持:櫻井よしこ、百地章、島善高、八木秀次の4氏。

・中立的支持:大石眞、市村真一、小田部雄次の3氏。

・言及せず:山内昌之、今谷明、田原総一朗、笠原英彦の4氏。

・強い反対:所功氏。

 積極、消極の濃淡はあれ、12人のうち7人が支持していたようだが、

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