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[4]GP第1戦「スケートアメリカ」リポート(下)

小塚崇彦、町田樹から学んだこと

青嶋ひろの フリーライター

 ショートプログラム終了後――取材する記者たちのテンションは異様に高く、ホテルに帰る車の中でも、語りやまない。スケートの取材をしていて、年に一度あるかないかのエキサイティングな試合が、シーズン初っ端から起きてしまったのだ。

 しかしショートプログラムでは終わらないのが、フィギュアスケートの試合のおもしろさでもある。SPを終えて2位の小塚崇彦とは約10点差をつけての1位。フリーでもしも同じことが起きたら――4回転のトウループとサルコウを成功して勝てたら、羽生結弦はもう本当に怪物だろう、と誰もが思った。

 これだけ注目され、期待され、世界最高得点というお膳立てまでされてしまった。公式練習では相変わらず好調で、フリー当日も何事もないように2種類の4回転を決めている。

 その中で見せた、羽生結弦の「めっちゃ苦い」フリーだった。4回転トウループ、4回転サルコウと、4回転を二つ続けて転倒。そこから先は安定しているジャンプばかりのはずなのに、ルッツがダブルになり両足着氷、最後のトリプルフリップで三たび転倒――。

拡大スケートアメリカのフリーで失敗して、採点を待つ羽生結弦。左はブライアン・オーサーコーチ=撮影・Martha

 ジャンプの失敗で滑りの流れが止まることもあったし、最後のステップは体調の悪かったフィンランディア杯以上にふらふら。誰も予想しなかった、また彼もここ数年見せたことのない大失敗だった。

 「結弦も人間なんだな、と思いました。なんだかほっとしましたよ(笑)」とは、同じ試合を戦った町田樹の言葉。彼の言う通り、前日に氷の上にいたモンスターは、もうどこにもいなかった。

 「フリーの前の気持ちは……冷静だったと思います。ここで勝たなきゃいけないって気持ちは、なかった。逆にショートで大差をつけたことで、落ち着いていられた。でも、結局負けちゃった……。4回転は、どうしてミスしてしまったのか、わからないです。

 せっかく10点くらい離してたのに、逆にいっぱい差をつけられて負けちゃった……。すごく悔しいです。だから次は、絶対に勝たないといけない。あと1カ月……身を削るような練習を、精一杯やりたいと思います」

 敗因の一つは、今シーズンから挑戦しているジャンプ構成、4回転2本の転倒だろう。極めて安定しているとはいえ、「何もイメージしなくても跳べる」3回転に比べれば、成功確率は100%には遠い。2度跳んで2度とも失敗する今回のようなケースも、予測できないものではなかった。

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筆者

青嶋ひろの

青嶋ひろの(あおしま・ひろの) フリーライター

静岡県浜松市生まれ。2002年よりフィギュアスケートを取材。日本のトップ選手へのインタビュー集『フィギュアスケート日本女子 ファンブック』『フィギュアスケート日本男子 ファンブック Cutting Edge』を毎年刊行。著書に、『最強男子。 高橋大輔・織田信成・小塚崇彦 バンクーバー五輪フィギュアスケート男子日本代表リポート』(朝日新聞出版)、『浅田真央物語』『羽生結弦物語』(ともに角川つばさ文庫)、『フィギュアスケート男子3 最強日本、若き獅子たちの台頭 宇野昌磨・山本草太・田中刑事・日野龍樹・本田太一」(カドカワ・ミニッツブック、電子書店で配信)など。最新刊は、『百獣繚乱―フィギュアスケート日本男子―ソチからピョンチャンへ』(2015年12月16日発売、KADOKAWA)。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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