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TBS、WOWOW共同制作の傑作「ダブルフェイス」

川本裕司

川本裕司 朝日新聞記者

 TBSとWOWOWが初めて共同制作して放送されたドラマ「ダブルフェイス」が視聴者から圧倒的な支持を受けた。テレビ局の垣根を越える番組が珍しいなか、練りに練った企画が成功を導いた。傑作をもたらした共同制作は、「どのチャンネルを回しても同じような番組ばかり」というテレビ批判を封じるきっかけになるかもしれない。

 「ダブルフェイス」は香港映画「インファナル・アフェア」のリメーク。暴力団の内情を探るため身元を隠して入り込んだ捜査員(西島秀俊)を中心に描いた「潜入捜査編」と、父親代わりの暴力団組長に命じられ警察官となったヤクザ(香川照之)の視点から見た「偽装警察編」の2番組が制作された。TBSが10月15日夜に「潜入捜査編」を放送した最後に、27日夜のWOWOW「偽装警察編」を大々的に告知した。

 映画「海猿」シリーズの羽住英一郎が監督をつとめ、脚本は映画「パッチギ!」「フラガール」を手がけた羽原大介。2時間弱の作品を2本放送したわけだが、地上波民放より時間あたりの制作費がかなり高いWOWOWの基準で1本半ほどのコストでまかなえたという。

 255万人(10月末現在)の有料会員以外には弱い存在感を高めたいWOWOWと、有料放送の舞台に進出の手がかりをつかめるTBSのそれぞれの狙いが合致した。こうしたビジネス上の計算を超えて、作品の完成度は出色だった。

 二つのテレビ局がそれぞれの思惑が交差するのを象徴するように、主人公も2人。ともに表の顔と裏の役割が違い、それぞれに葛藤をかかえている。結婚や心通いあう関係を築こうとすれば、現在の立場を捨てなければいけない。しかし、上司は役割放棄を容易には許さない。アンビバレントな心理から逃れられない主旋律が、見るものを片時も離さない緊迫感を持続させる。警察組織や暴力団に縁がなくスパイを身近に知らない視聴者であっても、番組に引き込まれたはずだ。今年のドラマの最高傑作といっていい。

 TBSの視聴率は13.4%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)と同じ時間帯の首位。TBSの前4週の平均視聴率11.5%を上回った。WOWOWのホームページには放送終了後、アクセスが殺到、新たな契約申し込みも異例の数に達したという。WOWOWの和崎信哉社長は11月8日の定例記者会見で「われわれの作るドラマとTBSのドラマでは、経験もターゲットも作法もカルチャーも違う。それがぶつかりあって、新しい形が生まれ、うまくいった」と評価した。

 予想以上の反響の大きさを受け、WOWOWは12月23日午後4時から「潜入捜査編」と「偽装警察編」を続けて放送することを決めた。TBSは来年1月5日午後9時から「偽装警察編」を編成することを決めた。

 TBSとWOWOWはドキュメンタリーでも

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筆者

川本裕司

川本裕司(かわもと・ひろし) 朝日新聞記者

朝日新聞記者。1959年生まれ。81年入社。学芸部、社会部などを経て、2006年から放送、通信、新聞などメディアを担当する編集委員などを歴任。著書に『変容するNHK』『テレビが映し出した平成という時代』『ニューメディア「誤算」の構造』。

 

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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