市田隆(いちだ・たかし) 朝日新聞編集委員(調査報道担当)
朝日新聞編集委員。1964年生まれ。読売新聞社を経て2003年入社。東京本社社会部の司法記者クラブキャップ、デスクなどを経て、11年から特別報道センターで調査報道を担当する編集委員。これまで主に政官業の癒着や金融業界の不祥事をテーマにした取材を担当。【2015年9月WEBRONZA退任】
市田隆
検察審査会は検察の不起訴が適切かどうかを検討する組織で、その議決に2009年5月から強制力が与えられた。2回続けて「起訴すべきだ」と議決すれば、強制起訴の手続きがとられることになる。
全国にある審査会は、くじで選ばれた地元の市民11人で構成され、任期6カ月で交代していく。無罪判決を受け、検察審査員は強制起訴の権限の重みを改めて考える必要があると思う。
司法改革の一つとして導入された強制起訴は、市民がおかしいと思うなら、検察の段階で結論を出さず、裁判所に判断してもらおうとする制度だ。市民感覚を生かす意義は大きいが、無罪判決を出してもいいということにはならない。被告を法廷に立たすべきかどうかを今まで以上に慎重に判断すべきだろう。
2回目の審査で法的なアドバイスをした審査補助員の弁護士がこれまでの朝日新聞の取材に対し、審査の様子を語っている。審査員らは捜査記録を読み込み、判例への見解を弁護士らに何度も聞き、議論を重ねたうえ、小沢氏を起訴すべきだと結論づけた。この弁護士は取材に「素人の感情的な判断という批判は見当違いだ」と述べたという。
無罪判決の教訓として、こうした審査の過程を詳細な記録に残して公開し、後から検証できるようにすることが求められる。制度を生かすために運用を見直していかないと、いつまでたっても「法律の素人が起訴を決めて大丈夫なのか」と心配する声はなくならない。
また、東京地検特捜部の検事が事実と異なる捜査報告書を作成し、検察審査会に提出した問題は、議決への影響が明確になっていないため、依然としてくすぶっている。このような行為は今後、あってはならないことだが、同様の不当な介入があった場合に、その責任を明らかにするためにも、審査経過の記録は必要なのではないだろうか。
一方、小沢氏の資金管理団体「陸山会」の土地取引事件の裁判の経過を見ると、プロの裁判官でも判断が分かれるほど、
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