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在日歴30年、日本の植民地時代を知る中国朝鮮族の苦衷

小野登志郎 ノンフィクションライター

 在日中国人と一口に言っても、現在日本には70万人近い中国人が常時日本全国に滞在しており、その意識の全体を窺い知ることはもちろんわたしにできることではない。ここで記述できることは、わたしが接した在日中国人の印象的な態度と言葉のいくつかについてである。

 その第一は、在日中国人と、旅行やビジネスで来日した中国人との間における尖閣問題に関する「論争」だ。短期の旅行やビジネスで来た中国人は、在日中国人に対して、「どう考えるのだ、お前の立場はどうなのだ」と詰め寄る。そうするとある在日中国人は「もちろん中国の領土だ」と答えたが、「しかし、日本側の意見も聞くべきだ」と主張する。中国で日本の主張を知る機会はそう多いとは言えない。在日中国人による「日本側の主張」の説明を、苦虫を噛みしめてはいるだろうが、本土の中国人が耳を傾けざるを得ない光景を何度か目にした。

 在日中国人は、日本人とこの話題について議論することを好んでいるようには見えず、自分から議論を仕掛けてくることは皆無だった。わたしからこの議論を振った時、ある在日中国人は「日本人の中で尖閣諸島は中国の領土だと公言している人はいるの?」と聞かれた。「まあ、あんまりいないだろうね」と答えたら、「そうでしょ。わたしも苦しいところです」と言われた。

 在日中国人は、この問題に関して冷静に対処しようとしていたと思う。そしてまた、本土の中国人に対しても、冷静になるよう促していたように思う。本土の中国人との議論に疲れたある在日中国人は、中国人に対して日本の立場を説明するために、わたしに尖閣に対する日本人の立場のかなり詳細な説明を求めてきた。

 在日中国人を媒介にして語られる、本土の中国人に向けての日本の立場と言葉。それは意外に重く力強いものがあるのではないかと少し期待した。ある在日中国人コラムニストは、「尖閣問題における一番の被害者は在日中国人だ」と主張した。日本にとっては、そのことプラス、「在中日本人も被害者だ」であるだろう。そして、被害者である在日中国人と在中日本人は、両国の懸け橋になりうる存在であるかもしれないとも思った。

 在日歴30年近い中国人旅行業者のAさんに、

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筆者

小野登志郎

小野登志郎(おの・としろう) ノンフィクションライター

1976年、福岡県生まれ。早大中退後、フリーのライターとして執筆活動を始める。在日中国人や暴力団、犯罪などについて取材し、月刊誌や週刊誌に記事を掲載している。著書に『龍宮城 歌舞伎町マフィア最新ファイル』『ドリーム・キャンパス』『アウトロー刑事の人に言えないテクニック』など。

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