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三冠王陥落でわかる失ったもの

川本裕司

川本裕司 朝日新聞社会部記者

 僅差の争いとなっても毎年なぜか「三冠王」という独占が続いていてきた民放テレビ局(東京)の視聴率競争で、2012年は三冠王となる局が消えた。1977年に現行のオンライン方式視聴率データ回収方法となり、翌78年以降は同率首位をふくめ「三冠王」が続いてきたが、初めて「二冠」と「一冠」に分裂した。

 昨年1~12月の年間視聴率(ビデオリサーチ調べ、関東地区)は、ゴールデンタイム(午後7~10時)で日本テレビの12.3%が1位、テレビ朝日の12.2%が2位。プライムタイム(午後7~11時)で1位がテレビ朝日の12.5%、2位が日本テレビの12.2%、全日(午前6時~午前0時)では1位が日本テレビの8.0%、2位がテレビ朝日の7.7%だった。2局のデッドヒートは痛み分けの決着となった。

 2011年、7年ぶりに三冠に輝いた日本テレビは二冠となった。昨年11月25日時点で、プライム帯がテレビ朝日に0.1%下回る12.2%だった日本テレビの小杉善信常務は「長尺の特番が入る12月に昨年は追いつき追い越した。同率でも首位なら三冠王といえるので……」と意欲を示していたが及ばなかった。テレビ朝日のドラマ米倉涼子主演の「ドクターX」が平均18.9%と10月クール最高の視聴率を稼ぎ、日本テレビを突き放した。12月半ばには日本テレビ幹部も「今年の三冠は無理。逆にゴールデン帯が詰められている」とあきらめ顔だった。

 一方、年間のトップが1959年の開局以来初という快挙に、テレビ朝日の早河洋社長は1月4日の年頭あいさつで「去年私たちは、54年の歴史の中で初めての快挙を成し遂げました。年間視聴率でついにプライムイムトップを勝ち取りました。最高のお正月となりました」と喜びを爆発させた。昨年11月の記者会見で早河洋社長が「トップ争いできるのは初めてで、制作現場はチャンピオンになるハードルの高さを体感しているのではないか。今年の体験は次のステップに必ずつながる」と、控え目に「チャレンジャー」の立場を強調していた。

 プロ野球打撃部門の三冠王は達成がまれだが、テレビの場合は流れや勢いが視聴率に反映するせいか、局が入れ替わっても三冠王状態が継続されてきた。78~81年がTBS、82~93年がフジテレビ、94~03年が日本テレビ、04~10年がフジテレビ、11年が日本テレビと年間制覇が続いていた。ただ、全日については80年代末までNHK総合が民放各局を上回っており、名実ともに三冠王といえるのは90年代以降だ。

 視聴率の世界に三冠王の呼び方を持ち込んだのは、82年から12年連続で三冠王に君臨したフジテレビ。その後、日本テレビとの ・・・ログインして読む
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筆者

川本裕司

川本裕司(かわもと・ひろし) 朝日新聞社会部記者

朝日新聞社会部員。1959年生まれ。81年入社。学芸部、社会部などを経て、2006年から放送、通信、新聞などメディアを担当する編集委員などを経て、19年5月から大阪社会部。著書に『変容するNHK』『テレビが映し出した平成という時代』『ニューメディア「誤算」の構造』。

 

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