松瀬学(まつせ・まなぶ) ノンフィクションライター
ノンフィクションライター。1960年、長崎県生まれ。早稲田大学ではラグビー部に所属。83年、早大卒業後、共同通信社入社。運動部記者としてプロ野球、大相撲、オリンピックなどを担当。02年に退社。人物モノ、五輪モノを得意とする。著書に『汚れた金メダル』(ミズノスポーツライター賞受賞)、『早稲田ラグビー再生プロジェクト』、『武骨なカッパ 藤本隆宏』。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
まず一般常識からの組織の問題意識のかい離である。密閉体質、対応の鈍さである。今回の女子柔道・日本代表の園田隆二監督とコーチがトップ選手15人に暴力やパワーハラスメントをしていた問題では、全日本柔道連盟(全柔連)と日本オリンピック委員会(JOC)のズサンな対応が混乱を大きくした。後手、後手に回った。
国際基準からいけば、まず「誰を守るのか」を考えなければならない。これは選手である。だが、全柔連もJOCも自分たちの地位(権力)保全を第一に事を進めようとした。メディアにすっぱ抜かれたから、大騒ぎになっただけである。メディアに気がつかれなければ、園田監督とコーチ陣への「戒告処分」だけで、水面下で解決させる方針だった。
これは間違っている。国際基準で考えれば、選手からの告発があった時点で、当事者と関係者の資格を停止し、第三者による調査・原因究明を進め、当事者の処分・謝罪・改善策の実行、さらには賠償・再発防止策の策定に移るのが筋であろう。それも、クイックでやらないといけない。競技生命が短い選手たちへの被害を極力、避けるためだ。
だが、今回の問題の場合、全柔連が昨年9月下旬に選手から告発を受けた後、組織内にてナアナアで事を収めようとした。JOCとて、昨年12月4日にトップ選手15人から異例の告発を受けてから、「アスリート・ファースト(選手優先)」を謳いながら、全柔連の立場を尊重するあまり、全柔連の主体で問題を解決させようとしていた。
もしも、全柔連、もしくはJOCが迅速、かつ公正に問題に対処していれば、これほどの大騒ぎにはならなかった。大阪の桜宮高校での「体罰問題」が社会問題となった後の問題噴出だったため、テレビメディアも派手にワイドショー的な扱いをしたのだろう。
海外メディアも報道することとなり、2020年東京五輪パラリンピック招致に打撃を与えることになった。せっかく盛り上がってきた国内支持率に水を差すだけでなく、国際オリンピック委員会(IOC)委員への「東京イメージ」にマイナスとなるかもしれない。日本のスポーツは未成熟、国際基準に至ってないとの印象を持たれかねないのだ。ライバル都市の東京ネガティブキャンペーンに材料を提供することにもなった。
全柔連の体質は、