松瀬学
2013年02月27日
それが『アグレッシブ・アタッキング(超攻撃)ラグビー』だった。サントリーの場合、アタッキングシェープ(陣形)とブレイクダウン(タックル後のボール争奪戦)は連動している。攻撃のオプションを増やすことで相手ディフェンスをばらし、極力1対1の局面をつくってボールをリサイクルしていく。
いわば高速展開、連続攻撃。高い意識と確かな技術で我慢強く攻め続け、トライを獲るのである。2月24日の日本選手権決勝。パスを乱す神戸製鋼に対し、サントリーはここぞという場面で球を確実につないでいった。神鋼のエースの南ア代表CTB、ジャック・フーリーの嘆きが印象的だった。「サントリーはどんなにフェーズ(局面)を重ねていっても、プレーの精度が落ちない」と。
あえて勝負のポイントを挙げれば、後半の立ち上がりだった。シンビン(反則による一時的退場)で一人少ないサントリーが球を保持しながらゴール前に攻め込み、SO小野晃征が相手防御ラインの裏のスペースにゴロキックを蹴り込んだ。CTB平浩二が走り込んでトライ(ゴール)し、22-3とした。
スコア以上に、神鋼に与えた精神的ダメージは大きかったはずである。ここはキックの精度もさることながら、小野と平のゲーム理解度の高さが光る。一事が万事。サントリーはアタックにしても、ディフェンスにしても、シェープが確立している。とっさの判断と反応がはやく、つまりは個々の意識とスキルが高いのだろう。
これはチームの「ファンダメンタル(基礎部分)」がしっかりしているからである。超攻撃ラグビーを可能にするための「ストレングス(からだの強さ)とコンディショニング(心身の準備)」が充実しており、体力、基本技術、精神力が個々に備わっているからである。
昨季のチームより進化した、と大久保直弥監督は胸を張った。「一人一人のフィットネス、ストレングス、ゲームの理解度、スキル……。全員が、去年の自分をはるかに超えたと言い切れます」と。
これはチーム内の激しい競争が大きい。2年目のWTB村田大志や3年目のナンバー8西川征克ら若手が成長し、ベテランを刺激している。個々のタックルがよくなったのは、筋力アップもあるけれど、練習でアタック、ディフェンスを行う際、対抗する控え組の攻撃力がアップしたこともあろう。
さらには元豪州代表フランカーのジョージ・スミスや南ア代表SHのフーリー・デュプレアの存在がチーム力を押し上げている。プレーはもちろん、フィールド外の世界トップクラスの態度、意識も勉強になるだろう。サントリーはチーム強化にとって、まったく良き外国人を連れてくる。
結果、チームには勝つためのカルチャー(文化)が熟成されている。意識の高さである。ディシプリン(規律)があり、プライドがあり、
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