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「バルセロナ」に似たサントリーの超攻撃ラグビー

松瀬学

松瀬学 ノンフィクションライター

 ラグビーの日本選手権はサントリーのV3で幕を閉じた。今季、トップリーグと合わせ、史上初の17戦全勝で、2年連続の2冠となった。他チームとの違いは、サントリーには戻るべき場所、こうやって勝ちにいくというスタイルが確立されていたことである。

 それが『アグレッシブ・アタッキング(超攻撃)ラグビー』だった。サントリーの場合、アタッキングシェープ(陣形)とブレイクダウン(タックル後のボール争奪戦)は連動している。攻撃のオプションを増やすことで相手ディフェンスをばらし、極力1対1の局面をつくってボールをリサイクルしていく。

 いわば高速展開、連続攻撃。高い意識と確かな技術で我慢強く攻め続け、トライを獲るのである。2月24日の日本選手権決勝。パスを乱す神戸製鋼に対し、サントリーはここぞという場面で球を確実につないでいった。神鋼のエースの南ア代表CTB、ジャック・フーリーの嘆きが印象的だった。「サントリーはどんなにフェーズ(局面)を重ねていっても、プレーの精度が落ちない」と。

 あえて勝負のポイントを挙げれば、後半の立ち上がりだった。シンビン(反則による一時的退場)で一人少ないサントリーが球を保持しながらゴール前に攻め込み、SO小野晃征が相手防御ラインの裏のスペースにゴロキックを蹴り込んだ。CTB平浩二が走り込んでトライ(ゴール)し、22-3とした。

 スコア以上に、神鋼に与えた精神的ダメージは大きかったはずである。ここはキックの精度もさることながら、小野と平のゲーム理解度の高さが光る。一事が万事。サントリーはアタックにしても、ディフェンスにしても、シェープが確立している。とっさの判断と反応がはやく、つまりは個々の意識とスキルが高いのだろう。

 これはチームの「ファンダメンタル(基礎部分)」がしっかりしているからである。超攻撃ラグビーを可能にするための「ストレングス(からだの強さ)とコンディショニング(心身の準備)」が充実しており、体力、基本技術、精神力が個々に備わっているからである。

昨季のチームより進化した、と大久保直弥監督は胸を張った。「一人一人のフィットネス、ストレングス、ゲームの理解度、スキル……。全員が、去年の自分をはるかに超えたと言い切れます」と。

 これはチーム内の激しい競争が大きい。2年目のWTB村田大志や3年目のナンバー8西川征克ら若手が成長し、ベテランを刺激している。個々のタックルがよくなったのは、筋力アップもあるけれど、練習でアタック、ディフェンスを行う際、対抗する控え組の攻撃力がアップしたこともあろう。

 さらには元豪州代表フランカーのジョージ・スミスや南ア代表SHのフーリー・デュプレアの存在がチーム力を押し上げている。プレーはもちろん、フィールド外の世界トップクラスの態度、意識も勉強になるだろう。サントリーはチーム強化にとって、まったく良き外国人を連れてくる。

 結果、チームには勝つためのカルチャー(文化)が熟成されている。意識の高さである。ディシプリン(規律)があり、プライドがあり、 ・・・ログインして読む
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筆者

松瀬学

松瀬学(まつせ・まなぶ) ノンフィクションライター

ノンフィクションライター。1960年、長崎県生まれ。早稲田大学ではラグビー部に所属。83年、早大卒業後、共同通信社入社。運動部記者としてプロ野球、大相撲、オリンピックなどを担当。02年に退社。人物モノ、五輪モノを得意とする。著書に『汚れた金メダル』(ミズノスポーツライター賞受賞)、『早稲田ラグビー再生プロジェクト』、『武骨なカッパ 藤本隆宏』。

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