林信行(はやし・のぶゆき) ITジャーナリスト
【退任】1967年生まれ。IT系ジャーナリスト・コンサルタント。90年にパソコン誌でニュース記事の執筆を開始。現在、企業や学生向けの講演に力を入れている。主要メディアでソーシャルメディアやスマートフォンの最新トレンドを解説する一方で、海外メディアには日本の技術を紹介。主な著書は『iPhoneとツイッターは、なぜ成功したのか』『スティーブ・ジョブズ 成功を導く言葉』など。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
林信行
そんな被災地を差し置くように、残りの日本は、まるで3.11などなかったかのように心が離れ始めている印象もある。
被害の大きかった人達の未だ改善されない状況に焦点を当ててしまうと、そんな風に思えてならず、なんともやるせない気持ちになる。
だが、ちょっと視点を変えると見え方が大きく変わる。
2年前のあの日まで時計の針を巻き戻すと、我々は「もしかしたら、この世の終わりなのではないか」とさえ思えた、あのとてつもなくひどい状況からは、実はかなり大きく進展したことが思い出される。
グーグル社が提供するグーグルアースでは、実際に時計の針を巻き戻して2年前のあの時の状況を空から振り返ることができる(パソコンでグーグルアースを起動して、「時計」の絵が描かれた「過去のイメージを表示」するボタンをクリックし、スライダーで時間を巻き戻すことで、昔の航空写真が見れるのだ)。
私はあの津波で1回部分が冠水した仙台空港が、驚くべき短期間で復旧する様を、グーグルアースで繰り返し何度もみては、勇気づけられている。
震災直後は、自分も不安でしょうがない中、なんとか東北を救おうという気持ちで日本が(もしかしたら世界が)一体になった実感があった。そして、すべてを投げ捨てて、その思いを行動に移す人々が世界中に溢れていた。
しかし、時間が経ち、被害が少ない地域では少しずつそれ以外の日常や自我への思いが増してきて大幅にペースがダウンしてきた。これは被災者にとっては悲しいことだが、日本を止めず先に進めるために納得はしないまでも理解して欲しい部分もある。
一方で、同じ被害の少ない地域に住んでいても、自らの日常を捨て、とんでもない熱意と覚悟で被災地のために未だに行動し続ける人も少なからずいる。彼らの熱意や行動には本当に頭が下がる思いだ。
そしてその周りには、自分の日常を守りつつも、なんとかうまい言い訳を考えて仕事を東北に絡めたりと余剰能力の許す範囲で被災地を支援しようとしている私のような人々も、まだまだ驚くほど大勢いる。
残念なのは、こうした人々の努力の多くが、例えば被災地の復興商店街で買い物をしたり、数日限りのイベントを盛り上げたりと単発の支援に終わってしまっており、被災地の方々が期待するような「大きな形」として残っていないことだ。
私はしくみや、しがらみに縛られた「国」よりも「思いのある個人の行動の総和」の方が、被災地により大きな貢献を果たせると
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