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石川議員は5千万円を受け取っていない

魚住昭

魚住昭 魚住昭(ジャーナリスト)

 小沢一郎氏の資金管理団体・陸山会の土地購入をめぐって元秘書3人が政治資金規正法違反(虚偽記載)に問われた事件の控訴審判決が13日、東京高裁であった。飯田喜信裁判長は、3人を有罪とした1審判決を支持し、3人の控訴を棄却した。

 この結論は、東京高裁が弁護側の証拠申請をほとんどすべて却下した時点で分かっていたことなので、私としてはいまさら言うべきことはない。ただ、高裁が1審同様、水谷建設側から石川知裕衆院議員への5千万円の裏金受け渡しを認定した点について一言述べておく。

 私は佐藤優さんと一緒に石川議員から相当詳しい内幕(その中には小沢事務所の台所事情や石川議員にとって不都合な話、プライバシーに関する話も含まれる)を聞いた。そのうえで 自分の記者生命を賭けて言うのだが、石川議員は5千万円を受け取っていない。

 これは、石川議員が特捜部の再聴取を受けた際「隠し録音」した田代政弘検事(当時)とのやりとりや、前田恒彦元検事の法廷証言でも裏付けられている。事件を捜査した当の検事たちが「石川さんは受け取っていない」と思っている裏献金が、1審ばかりが2審でも事実認定されるなんて、そんな馬鹿な話があっていいはずがない。

 もともとこの陸山会事件の捜査は、西松建設のダミー献金事件で小沢氏を失脚させられなかった特捜部の一部の検事たちの遺恨から始まっている。

 「西松がだめなら水谷で」と意気込む検事たちに水谷建設元社長が迎合して「岩手県・胆沢ダムの下請け工事受注の謝礼として04年10月1 5日、全日空ホテルのロビーで石川議員(当時は秘書)に5千万円を渡した」とする供述調書に署名した。

 さらに、脱税事件で服役中だった水谷建設元会長もそれと口裏を合わせるような形で供述したため、特捜部の一部の検事らは「これで小沢を逮捕できる」と舞い上がった。

 しかし、小沢氏を逮捕するには石川議員らの「自白」を得る必要があった。そこで引っ張り出されたのが世田谷区深沢の不動産購入費(約4億円)をめぐる「期ズレ」問題だ。04年分の政治資金収支報告書に記載すべきものが05年分にずれていたという、たったそれだけの話なのだが、それを口実に石川議員らは逮捕された。

 後の展開は皆さんご存知と思うので省くが、控訴審で石川弁護団は事件の真相を知るうえで極めて重要な証拠を高裁に提出した。それは水谷建設元社長と元会長の陳述書だ。

 元社長はそのなかで「検事から『04年10月の14日か15日に5千万円を渡したに違いない』と言われ、『14日か』と聞いたら『それは不可能』と言われ、15日に渡したことにした。また『誰に渡したかわかりません』と答えたら、検事に『じゃあ、石川議員にしよう』と言われた」と述べているという。

 元会長も「04年10月15日は元社長と一緒に仙台のゼネコン支店長のところに行き、終日行動を共にしていた(だから元社長が石川議員に5千万円を渡しているはずがない)」という趣旨の陳述をしているという。

 つまり陸山会事件の検察側証拠の核心である2人の供述が、実は検事の誘導によって作られたもので あることを2通の陳述書は指し示している。しかも、2人とも陳述書の内容を法廷で証言しても構わないと言っているという。もし、2人の証人尋問が控訴審で実現していたら、陸山会事件の真相がかなり明るみにでていただろう。

 ところが東京高裁の飯田裁判長は2人の陳述書の証拠採用を却下した。(ちなみに弁護側申請証拠計87通のうち86通を却下した)。もちろん2人の証人尋問も認めず、控訴審では実質的な証拠調べは何も行わなかった。

 これは何を意味しているかというと、飯田裁判長は事件の真相解明にまったく関心がないということだ。彼は最初から1審判決を維持して、検察のメンツを立てることしか念頭になかったと考えるほかない。さすがは東電OL事件で1審無罪判決を受けたゴビンダ・マイナリさんに逆転有罪判決を下した裁判官(当時は主任裁判官)である。

 議員会館で開かれた報告集会で石川弁護団の安田好弘弁護士は

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