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陸山会事件、10年後の評価は?

市田隆

市田隆 朝日新聞編集委員(調査報道担当)

  政治資金規正法違反の罪に問われた、小沢一郎氏の元秘書3人に対し、東京高裁は、一審に続き、有罪を言い渡した。10年後、20年後…この事件を思い出す時、どのような印象が残っているのだろうか、とふと考えてしまった。検察側に軍配をあげた有罪判決だけでは語り尽くせないほど、検察不信につながる様々な出来事があったからだ。

 小沢氏の資金管理団体「陸山会」をめぐる一連の事件は、西松建設による違法献金事件と、土地取引事件という2段階に分かれる。違法献金事件の強制捜査が行われた2009年3月は、自民党から民主党への政権交代の可能性をはらんだ総選挙前の時期。「政治介入」「国策捜査」などと検察当局を批判する声が巻き起こった。その後に摘発された土地取引事件の公判では2011年6月、元秘書の衆院議員・石川知裕被告らの捜査段階の取り調べについて、東京地裁が「威圧や威迫、利益誘導があり、自白調書に任意性がない」と、特捜検事の行き過ぎを厳しく非難した。

 政界をターゲットにした特捜捜査で実績をあげ、長年にわたり、国会議員側の不正をただす役割を担ってきた検察に逆風が吹き続けた。2010年秋には、大阪地検特捜部を舞台にした証拠改ざん事件が発覚し、特捜捜査の威信低下に拍車をかけた。

 陸山会の土地取引事件では、小沢氏本人の関与を疑った捜査を続けた末、検察当局は、小沢氏を不起訴処分としたが、検察審査会の判断で強制起訴されることとなり、結果は無罪。公判の中で、検事が事実と異なる捜査報告書を作成した問題も噴出した。検察の不起訴の判断が妥当だったという結果にもかかわらず、検察のイメージダウンにつながった。

 こうした経過をたどってきたため、陸山会をめぐる事件の捜査・公判が進んだ時期に、検察が大きく傷ついたことは否定できない。元秘書らの有罪判決も、10年後に思い出す時、検察の威信低下の流れの中に紛れこんでしまった印象になる気がしてならない。

 しかし、事件を総合的に評価すれば、検察が傷ついたことは一側面であり、事件の意味はそれだけにとどまらない。

 今回の元秘書らの政治資金規正法違反事件の捜査で、東北地方の公共工事受注における政治家側とゼネコン業界の癒着構造が明るみに出たことの価値は、

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