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相互乗り入れに反対、新しい交通イノベーションを

林信行

林信行 ITジャーナリスト

 ジャーナリストと言え人間。「主観」を殺して「客観」を装っても、根底に「主観」が現れてしまうこともある。それよりは最初から堂々と、自分の立場をはっきりさせ、これは偏った私権であることを断った上で「変わる渋谷駅」への意見を述べたい。

 私は今回、東横線が副都心線と相互乗り入れすることには反対の立場だ。東横線沿線に住んでいることもあり個人的にも深刻な問題として受け止めている。

 理由はたくさんある。東京の鉄道はこの十数年、どんどんと相互乗り入れが増えてきた。それによって起きたのが遅延の増加だ。

 かつて、外国人は「分単位で正確」な東京の電車に驚いていたが、その神話は崩れつつある。

 電車が相互乗り入れをし、1つの路線が広い範囲を移動するようになると、1カ所で起きた暴風や雪、地震といった災害や人身事故の影響が広い範囲に及ぶことになる。

 電車の接続には、これまで接続の悪かった地域間での人の行き来を増やす狙いがあるはずだ。うまくいくかは蓋をあけてからのお楽しみだが、万が一、うまく行った場合、それは電車の混雑が増えると言うことでもある。

 お年寄りや子連れの親、障害を抱える人が安心して乗れる電車はますます減る。

 安心して乗れると言えば、これまでは、ちょっと疲れた時は、とりあえず渋谷駅までタクシーで行き電車を1~2本見送れば、座って家に帰ることができた。相互乗り入れ後も渋谷発はあるにはあるようだが、これまでよりは待ち時間は長くなる。

 確かに東横線沿線から新宿や池袋に行く際には乗り換えが不要で便利になるかも知れない。だが、JRや京王線など、他の路線への乗り換えは遠く不便になる。

 そもそも、これまで東横線の渋谷駅からJRや副都心線に乗り換えることがそれほど大変だったかと言えば、そんなことはない。

 むしろ、東横線渋谷駅に掲げられた巨大な広告を見て、最近の旬な話題(テレビドラマであったり、最新の携帯電話であったり)を知ったりと、文化と情報を発信し続けていた「渋谷」という街の空気を「肌」で感じられる貴重な時間でもあった。これからは、そうした渋谷の光景を一切、目にすることなく、地下で素通りしてしまうのかと思うと、それも寂しい。

 他の路線に乗り換えるには、これまでよりもかなり長い道のりを移動することになり、その途上にある商店には嬉しいかも知れないが、そこまでまんまと鉄道会社の思惑通りに動かされるよりも、私的には今後、タクシー事業者やシェアリング自転車、シェアリング自動車など、もっと利用者主体の新しい交通イノベーションが広がってくれることに期待したくなってしまう。

 東京の街では大勢の人々の行動や生活が電車の路線で制約される。例えば自動車ならすぐ近くの場所が、それぞれ違う鉄道会社が開発した街だと、かなり電車で遠回りをしないと行けないことが多い。バスはないのかと探してみても、競合が開拓した街を行き来するバスはない、ということも多い。

 そこまで人々の生活に支配的な影響力を持つ公共交通機関。もっと沿線住人に意見を聞く機会を増やしてもいいのではないかと思う。

 それでは、この相互乗り入れで渋谷はどう変わるのか。降りて乗り換えをする必要がなくなった分、渋谷駅を ・・・ログインして読む
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筆者

林信行

林信行(はやし・のぶゆき) ITジャーナリスト

【退任】1967年生まれ。IT系ジャーナリスト・コンサルタント。90年にパソコン誌でニュース記事の執筆を開始。現在、企業や学生向けの講演に力を入れている。主要メディアでソーシャルメディアやスマートフォンの最新トレンドを解説する一方で、海外メディアには日本の技術を紹介。主な著書は『iPhoneとツイッターは、なぜ成功したのか』『スティーブ・ジョブズ 成功を導く言葉』など。

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