メダル争いも見えてきた無良崇人のポテンシャル
2013年03月22日
「いや、その心配は、全然ありませんでした。大ちゃんはどう滑っても、しっかりと評価されるものを持っている。結弦だって、絶対にまとめてくると思ってました。あいつの強さが半端ないことは、知っていますから」
チームメイトのことをここまで信用しているとは、うれしい驚きだ。日本男子チーム、いつの間にこんなに強い集団になっていたのか。
そんななか、アスリートとしての強さを改めて見せた羽生結弦。彼とは対照的に、エンターテイナーとしてのポテンシャルに驚かせてくれた無良崇人のフリーだった。
4回転の失敗については、ひとまず置いておこう。彼の代名詞である「男のジャンプ」を見せられなかったことは、やはり彼自身がいちばん悔しいだろうから。そこから、ショートプログラムと同じようにしっかり切り替え、4回転以外のすべてのジャンプを完璧に決めたこと。なかでもトリプルアクセルの華麗といえるほどの力強さを4年ぶりに世界に見せたことも、素晴らしかった。
結果もフリー5位で、総合順位はショートプログラムから大きく上げて、8位。もし高橋が大きく順位を落としていたとしても、羽生と無良の合計順位でソチの3枠は獲得できていた。五輪前の世界選手権、3番手の枠を超えた立派な成績といえるだろう。
しかしフリーでの一番の驚きは、ジャンパーとして知られた無良が、彼だけの独創的な世界を氷上に作り上げられたことだ。
彼の手の動きは、こんなに滑らかだったか。手のひら一枚の差し出し方が、こんなにも優しげだったか。
ジャンプは跳躍そのものも美しいが、注目したいのは着氷してから次の要素に移るまでの所作。たとえばアクセルを跳んだ後にふわりとひざまずく、その動きがとても優雅なのだ。
グランプリシリーズ・エリック杯(フランス大会)で優勝したときも、「SHOGUN」のプログラムは話題になったが、その時以上にひとつひとつの動きに、確固とした芯が生まれていたようだ。
和の音楽に乗って、侍の魂を描くこのプログラム。実は音楽の作曲者も振付師も
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