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開催時期、出場選手……WBCをもっと面白くする方法

大坪正則 大坪正則(帝京大学経済学部経営学科教授)

 ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が終わった。残念なことに、日本代表(侍ジャパン=以下「侍」)は準決勝で敗れて3連覇を逸した。

 代わりに優勝したのがドミニカ共和国。強かった。1次ラウンドから8戦全勝で頂点に達した。

 大会も3回目を迎えて、WBCの運営方法が日本プロ野球(NPB)を含む参加国が想定していた当初の計画(思惑)と異なり始めたようだ。そのため、様々な問題点が浮き彫りになり、解決すべき課題も徐々に明らかになった。そこで、経営の視点から、第4回大会及びそれ以降のWBCについて、主役であるメジャーリーグ(MLB)とNPBが取るべき対応策について考察する。

(1)WBCの運営

a)開催時期

 第1回、第2回大会もそうだったが、第3回に至ってもMLBとMLB選手会(米国側)が共同主催者であるにもかかわらず、肝心かなめの米国メディアと米国民が一向にWBCに関心を示さない。

 その理由ははっきりしている。3月は大学のバスケットボールの最終トーナメントがおこなわれ、米国の注目が大学バスケに集中するからだ。プレーオフ直前のプロバスケ(NBA)とプロアイスホッケー(NHL)も大学バスケの人気には形無しで、大学バスケの終了を待たざるを得ない。

 そんな状況だから、4年に一度の国際大会とはいえ、WBCを3月におこなう限り、米国で日の目を見ることはあり得ない。

 それでは、いつが最適か。私は6月後半から7月の間を勧める。

 米国主要スポーツのシーズンスケジュールは以下の通りだ。

MLB→4月~10月

NFL(ナショナル・フットボール・リーグ)→9月~翌年の2月初め

NHL→10月~翌年の6月前半

NBA→11月~翌年の6月後半

大学バスケ→~3月

大学アメフト→8月末~1月初め

 これから分かるように、6月後半以降から8月末まではMLBの試合しかおこなわれていない。しかも、7月一杯はプレーオフに生き残る熾烈な争いも本格化していない。従って、MLBとMLB選手会がシーズン中の6月~7月の間にWBC開催を移行することができれば、国別代表選のWBCの位置付けが大きく変わることになる。

b)出場選手

 WBCにはメジャーリーガーが多数参加する。彼らの中には米国国籍に加えカリブ海沿岸諸国出身者が数多くいて一大勢力をなしている。今回の第3回大会の決勝はドミニカ共和国とプエルトリコとの間だったが、両国の主要な選手はメジャーリーガーだった。

 優勝候補に目された日本・韓国・キューバの代表選手には現役メジャーリーガーが1人も含まれなかった。そのうち、韓国は1次ラウンドで、キューバは2次ラウンドで姿を消し、日本は4強止まりだった。第1回と第2回がそうだったように、結局、現役メジャーリーガーの参加と活躍がなければ優勝は難しいことが証明されたようだ。

 しかしながら、WBCの6月~7月への移行は簡単ではない。MLB球団のオーナーとMLB選手会がシーズンに空白期間を設けたくないと抵抗するのは火を見るよりも明らかだからだ。彼らはシーズンが延びることに賛成しないので、シーズンが途切れることなくWBCを開催できる手立てを考える必要がある。

 しかも、サッカー界のように選手を自由に解放(=リリース)させる方法では彼らの賛意を得ることは難しい。だがMLB各球団が平等に選手を解放するやり方であれば同意を得ることが比較的容易に違いない。この場合、各国調整の上、例えば、MLB各球団から最大4名の解放とし、それ以上はマイナーリーグから補う方法はどうだろう。

(2)NPBのビジネス対応策

a)収益配分

 第2回大会終了後から第3回大会の直前まで、収益配分について米国側と、NPBとNPB選手会(日本側)との間で交渉が続いた。WBCで得た収益(=収入から必要経費を差し引いた額)に関し、第1回大会から合意していた配分比率、米国側66%対日本側13%の改定を日本側、特にNPB選手会が強く主張した。

 外交交渉ではいったん文書化した合意事項を覆すことは難しい。米国側が66%を取るのは、収益が得られずに赤字になった時のリスクを負う見返りであった。逆に、日本側はリスクを取って収益率を上げることを回避した。

 しかも、今頃になって米国側と日本側が合意事項を破棄して新しく契約を結び直すことは、米国側と他国との合意内容にも影響を与えて米国側に著しい不利益をもたらすことになる。だから、米国側が日本側の申し出に応じることは絶対にあり得ない。収益配分率の改定交渉は労力の無駄であり、他の方法を検討すべきなのだ。

b)「侍」のビジネス展開

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