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全国的グループになっている怒羅権

小野登志郎

小野登志郎 ノンフィクションライター

 今年3月7日、警察庁は六本木殺人事件で世間の注目を浴びた「関東連合」OBグループを準暴力団として取り締まりの対象に認定。この「関東連合」と伴に「準暴力団」に指定されたのが「怒羅権」だ。彼らは中国残留日本人孤児の二世・三世を中心に1988年ごろ暴走族として結成された。

 「関東連合」や「怒羅権」は「半グレ集団」とも呼ばれ、暴力を用いた集団犯罪を繰り返しているとして、ともに取り締まりの標的となった。警察庁によれば「怒羅権」は、首都圏各地に複数のグループがあり、3世や日本人を含め総勢は数百人ともいわれる。

 警視庁の捜査関係者は言う。

 「準暴力団とは暴力団のような明確な組織性はないものの、所属メンバーが集団的または常習的に暴力的不法行為を敢行している集団のことを指します」

 「半グレ」とは「半分グレー」や「半分グレている」という意味の造語。古くから捜査官たちの隠語として使われていたというが、今の「半グレ」とはだいぶ違う。今の「半グレ集団」とは、ピラミッド型の明確な組織構造を持つ暴力団とは違い、緩やかな組織性を持った犯罪ネットワークを指す言葉として浸透しつつあるが、捜査当局者や事情を知るジャーナリストの間ではこの言葉に対する違和感がたびたび語られていた。

 「準暴力団は金属バットで一般人を間違って集団暴行するような集団。振り込め詐欺や薬物売買など資金源も豊富で、暴力団対策法に縛られたヤクザよりもある意味、危険性は高い。なのに『半グレ』では、その凶悪性がうまく伝わらない」(同上)。

 しかも暴走族「関東連合」のOBグループのように、メンバーには暴力団の構成員や周辺者という「もう一つの顔」を持つ者も少なくない。「1次団体の組長を頂点とする上下関係を軸とする暴力団に対し、半グレ集団は少年時代の人間関係を基に横のネットワークを構成している集団で、メンバーそれぞれが違う暴力団に所属しているということもあるようだ。彼らを暴力団に準じた集団と明示することにより、人間的・資金的関係を遮断するのが警察当局の狙いの一つ」と別の捜査関係者はそう明かす。

 ただし既に、警察当局が取り締まりを強化する動きを見越し、準暴力団側も準備を進めている。例えば暴走族「関東連合」OBの間では、今後「関東連合」の名前を表立って使わないよう「通達」が出ているという。彼らの活動がさらに潜在化することはまず間違いないだろう。

 「そもそも半グレ集団が力をつけてきた背景には、暴対法などの規制を嫌って暴力団が活動を潜在化させてきたことがある。自前で資金を獲得するのが難しくなった暴力団が若者の不良グループに犯罪行為の一部を『アウトソーシング』して、振り込め詐欺などでうまく利用してきた。半グレ集団だって、摘発が続けば、闇に潜るようになり、別の不良集団や外国人グループを利用しようとするだろう」と暴力団関係者は話す。

 このようなことから私は、暴力団と準暴力団(半グレ集団)に本質的な断絶は無いと考えている。

●暴力団排除条例との関連

 準暴力団という存在を改めてクローズアップすることになった背景には暴力団排除条例がある。この条例の施行から約1年半。施行時は、タレント・島田紳助さんの引退表明直後だったこともあり、「魔女狩り」が始まるのではないかとセンセーショナルに取り上げられたが、暴力団に利益供与したとして都公安委員会が条例に基づく勧告を出した事例はわずか6例。それも暴力団のみかじめ料徴収を代行していたマットレンタル業者や暴力団に会合場所を提供した中華料理店など、「しょぼい」案件ばかり。最近は新聞でも取り上げられることが少なくなった。

 「当初は警視庁も、暴力団と付き合いのある芸能事務所の動向を調べるなど、意気軒高だった。しかし、その影響の大きさに気づいたのか、今ではすっかりトーンダウンしている」(大手紙社会部記者)

 何があったのか。その前に条例の中身をおさらいしよう。

 暴排条例の狙いは、暴力団と付き合いのある事業者に関係遮断を迫ること。暴力団の活動を助長したり、その威力を利用する目的で利益供与した業者には勧告が出され、従わなければ事業者名が公表される。メディアではよく「密接交際者」という言葉が使われるが、条例で実際に出てくるのは「暴力団または暴力団員と密接な関係を有する者」という定義の「暴力団関係者」。相手が暴力団員と分かった上で頻繁に飲食したり、暴力団主催のイベントやゴルフコンペに参加したりすれば、立派な「暴力団関係者」になるという。

 ただ、東京都の条例では、暴力団との関係を自ら申告し、関係遮断を誓えば、勧告の対象外となる制度もある。このため、過去に「黒い交際」を取りざたされたことのある芸能人の中では条例施行前に警察にこっそり自主申告に行く者もいたという。

 一度、暴力団関係者と認定されれば、芸能人のみならず、大抵の事業者にとっては死活問題だ。条例は

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