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 埼玉西武ライオンズの親会社、西武ホールディングス(HD)と西武HDの筆頭株主、米国投資会社のサーベラスとの関係が、西武HDの再上場を目前にしてきな臭くなってきた。

 筆者は焦点の一つであるライオンズの売却はあり得ないと考えている。しかし、最近、サーベラスがより強気な姿勢をとっているので、株式公開買い付け(TOB)を通じて西武HDの株式を49%以上買い占めることもあり得ないことではないとも考えている。

 もしそれが実現すれば、野球協約第28条(株主構成の届出と日本人以外の持株)の第2項「日本に国籍を有しないものの持株総計は資本総額の49パーセントを超えてはならない」に抵触し、球界を巻き込んだ議論が展開されるだろう。

 資本の論理と、公共性を前面に打ち出した、いわば感情論との意見対立はこれからの球界に少なからぬインパクトを与える可能性を秘めている。この機会に、西武HDとサーベラスとの論点を整理してみる。

 西武HDとサーベラスの関係は2005年10月に始まった。だが、発端はさらにその1年前に遡る。2004年8月から9月にかけて、当時の西武鉄道の大株主、コクドの会長だった堤義明氏らが西武鉄道株を大量に売却した際、売却したコクド名義の株数と同数の個人名義に偽装した株をコクド名義に書き換えていたことが判明。堤氏は証券取引法違反容疑で逮捕された。そして西武鉄道は有価証券報告書の虚偽記載によって上場廃止となった。

 逮捕とともに西武鉄道とコクドの全役員職を辞していた堤氏の有罪が確定した2005年10月、西武鉄道とそのグループ(西武鉄道グループ)は、主要取引銀行であるみずほコーポレート銀行の副頭取だった後藤高志氏を西武鉄道社長に迎え、彼を中心に当時の経営陣とともに経営再建を目指すことになった。

 その時、西武鉄道グループは西武HDの設立を決め、同時に、創業家保有株を希釈するために1600億円の増資を決めた。その増資のうち、サーベラスが900億円を引き受けて32.4%の株を保有する筆頭株主になった。そしてサーベラスと西武HDは再上場を目指して協力することになり、資本提携契約も締結した。

 しかしながら、西武HDとサーベラスとの蜜月は、2008年9月のリーマン・ショックによって微妙なものに変化したようだ。サーベラスがリーマン・ショックで痛手を被ったからだ。その時以来、サーベラスは西武HDの再上場による最大利益の確保を最優先するようになったようだ。

 利益の最大化とは、再上場の際の株価を最高値に付けることを意味する。そのためにどうしたらよいのかが検討され、2012年末、サーベラスから西武HDに対して50項目以上にわたる提案がなされた。その中に、ライオンズの売却も含まれていたのだ。

 ライオンズ売却をサーベラスの立場から眺めてみる。

 サーベラスでなくても、普通の資本家(投資家)であれば、(1)ライオンズは投資(出資)に見合う案件かどうか(2)ライオンズを保有することが投資家(親会社)にいかなる経営的意義をもたらすのか、について分析するのは当然のことである。そして、もしライオンズ保有よりも投資効率のよい事業案件があるならば、ライオンズ売却を試みるのは常識的なことではないだろうか。

 この場合、西武HDのライオンズ保有は他の11球団と比較して、次の2点で異なっていることを理解する必要がある。 ・・・ログインして読む
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筆者

大坪正則

大坪正則(おおつぼ・まさのり) 大坪正則(帝京大学経済学部経営学科教授)

1947年生まれ。1970年、伊藤忠商事に入社。1981~85年まで、アメリカのニューヨークとデンバーに駐在。情報通信総合企画室などを経て 1986年、NBAプロジェクトマネジャーに。現在、帝京大学経済学部経営学科教授。専門はスポーツ経営学。著書に『パ・リーグがプロ野球を変える』『スポーツと国力』(以上、朝日新書)、『プロ野球は崩壊する!』(朝日新聞社)、『メジャー野球の経営学』(集英社新書)など。2014年3月4日、死去。

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