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大産大「やらせ受験」問題の真相(中)――“第三者性”が担保されていない第三者委員会――

西岡研介

西岡研介 フリーランスライター

 いまどきの法人組織にしては珍しい、大阪産業大学(以下「大産大」)の“前近代的な閉鎖体質”については前回記したが、さらに驚くことに大産大は、4月12日に開いた本山美彦学長の会見で、発信元も、文責も不明の〈2009年度入試に係る事項について〉と題した文書を記者に配布。その文書の中で次のように述べている。

 〈今年1月から元総務部長らによる再告発によって、週刊朝日への掲載といった動きがあったため、再調査を進めるとともに、産大高校から、元教頭に改めて文書で聞き取り要請(内容証明郵便による)を行いましたが、これも拒否され、【中略】現在進めて頂いている第三者調査委員会からの元教頭への聞き取り要請に対しても同様の文書を送り拒否されていると聞き及んでおります。【中略】本学としましては、実態解明のために努力を尽くして参りましたが、このように協力して頂けないことについて遺憾に考えております。その結果、事実関係が錯綜している一要因となっており、まともに今まで本学の主張を皆様にお伝えできずにいました……〉

 つまるところ彼らは、「これまで元教頭が、自分達(産高)や第三者調査委員会の調査に応じなかったから、事実関係の解明ができなかった」と、その責任を元教頭一人になすりつけてようとしているのだ。

 これに対し、当の〈元教頭〉本人がこう反論する。

 「確かに今年の3月初めごろに突然、私宛に産高の平岡(伸一郎)校長(4月1日付で解任)から配達証明付き郵便が届きましたが、あくまで平岡校長からの私信で〈産大高校からの内容証明郵便〉などではありませんでした。3月12日に返事を添えて、その私信ごと土橋理事長に送り返しましたが、返事には『(「やらせ受験」が行われた)当時の状況ですが、(大産大)入試センターが作戦立案、(前理事長の)古谷氏が実行を指示されました。私は逐次、平岡氏へ報告させて頂きました』と書いておきました。

 私が産高の聞き取り要請にも、『第三者調査委員会』の聴取にも応じていない理由は簡単です。法人も、その法人が設置した『調査委員会』も信用できないからです。

 そもそも私が一昨年(11年9月)に告発文書を送った時になぜ、『内部調査』を中途半端な形で終わらせ、『やらせ受験』の事実を隠蔽したのか……。

 法人は、会見で配布した文書の中で〈(11年当時)元教頭から事情を聴きたいと面談要請を行いました。しかしこれを拒否され〉などと主張していますが、“口封じ”や“口止め”の意図をもった内々の打診や、『告発を止めてくれ』と懇願されたことはありましたが、公式な面談の要請は一度もありませんでした。そんな相手を信用しろというほうが無理な話です。

 さらに法人は私が『第三者調査委員会の聞き取り要請にも応じてない』と主張していますが、委員長はもちろんメンバーの氏素性も分からないような『第三者委員会』に、誰が協力できるというのでしょう」

 「やらせ受験」問題の発覚以降、大産大は「第三者調査委員会」の調査を理由に、この問題をめぐる数々な疑惑に関する説明を拒み続けていることは前回記した通りだ。が、元教頭の言う通り、大産大はこの「第三者調査委員会」について、「弁護士1名、マスコミ関係者1名、教育委員会関係者1名、学校関係者2名の計5名」(大産大総合企画室広報課)とするだけで、委員の氏名はもちろん、所属すら公表していない。

 そもそも「第三者委員会」とは、〈企業や組織において、犯罪行為、法令違反などが発生した場合、企業等から独立した委員のみをもって構成され、徹底した調査を実施したうえで、原因を分析し、必要に応じて具体的な再発防止策等を提言する委員会〉(日本弁護士連合会「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」より)とされる。

 これまで「第三者委員会」を設置した多くのケースで採用されたこのガイドラインによると、〈(調査対象の)企業等と利害関係を有する者は、委員に就任することができない〉、〈委員の企業等との関係性を記載して、ステークホルダー(利害関係者)による評価の対象にすべき〉とし、公表を原則としている。

 今回の大産大のようにメンバー非公開の、つまりは“第三者性”が全く担保されていない「第三者委員会」など、私は寡聞にて知らない。こんな独立性・客観性の疑わしい

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