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 読売ジャイアンツ(巨人)と阪神タイガースが、2014年3月、米国のロサンゼルス地域(ドジャースタジアムとエンゼルスタジアム)で公式戦開幕試合をおこなう準備を進めているそうだ。

 これが実現すれば、2002年5月の福岡ダイエーホークス(現在、福岡ソフトバンクホークス)とオリックス・ブルーウエーブ(現在、オリックス・バファローズ)の台湾での試合以来だ。そしてこれは史上初の米国での海外公式戦ともなる。

拡大アメリカの球場でも、こんなシーンが見られるだろうか?

 非公式戦と異なり、公式戦の開催となるとステークホルダー(ファンをはじめテレビやライセンスの契約者など利害関係者)の了解が必要となる。

 もっと重要なことは、公式戦をなぜ今、米国でする必要があるのか、巨人と阪神のみならず、プロ野球機構(NPB)がその理念・使命・戦略を保有しなければならないことだ。

 筆者は、米国プロバスケットボール(NBA)の日本での公式戦開催の折、日本側責任者(ちなみに、NBA側の責任者はプロアイスホッケー、NHLの現コミッショナーであるゲーリー・ベットマン氏)として1990年、1992年、1994年の試合を実施した経験を有する。

 1990年の公式戦は、米国プロリーグが北米大陸以外の土地で初めておこなったイベントとして、その歴史に永久に刻まれることになった。日本側もNBAも全てが初めての経験だったので、準備に2年以上かかった。

 それゆえ、巨人と阪神がこれから1年間準備することを想像するだけで気が遠くなりそうだ。1990年のときは、公式戦が終わって1カ月間、イベントの各担当者がそろって虚脱状態に陥った。このことからも、巨人と阪神の異国での興行がいかに大変な事業かを理解してもらえると思う。

 通常、この種の公式戦を海外(今回は米国)でおこなう場合、3者(3グループ)の同意を得なければならない。

 1番目はオーナー。公式戦開催はフランチャイズでの興行を放棄することを意味する。その見返りをオーナーが要求するのは当然のことだ。プロだから金銭的解決をはかる以外に方法はない。

 この場合、巨人と阪神が米国で興行権を行使する方法もあるが、興行リスクを勘案すれば、第三者(ビジネスパートナー)に興行権を売却(即ち、箱売り)するのが最も妥当な選択と言える。米国側が、270~290万人の年間観客動員力を誇る巨人と阪神が納得できる金額を提示できるか否かが、米国での公式戦開催可否の最大のポイントになりそうな気がする。

 2番目は

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筆者

大坪正則

大坪正則(おおつぼ・まさのり) 大坪正則(帝京大学経済学部経営学科教授)

1947年生まれ。1970年、伊藤忠商事に入社。1981~85年まで、アメリカのニューヨークとデンバーに駐在。情報通信総合企画室などを経て 1986年、NBAプロジェクトマネジャーに。現在、帝京大学経済学部経営学科教授。専門はスポーツ経営学。著書に『パ・リーグがプロ野球を変える』『スポーツと国力』(以上、朝日新書)、『プロ野球は崩壊する!』(朝日新聞社)、『メジャー野球の経営学』(集英社新書)など。2014年3月4日、死去。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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