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憲法21条「表現の自由」改正案への反対論議が低調な理由

川本裕司 朝日新聞社会部記者

安倍晋三首相が意欲を示す憲法改正では、発議要件を衆参の3分の2以上と定めた「96条」や国防軍の創設をうたう「9条」の改正が注目を集めている。その一方で、基本的人権の中核に位置する表現の自由を保障する「21条」の制限に踏み込んでいる改正についての議論は低調となっている。一部の弁護士が発言する程度だ。なぜなのか。

 報道と人権の問題に取り組んできた梓澤和幸弁護士は3月30日、市民ネットメディア「News for the People in Japan」で、「2012年4月に公表された自民党改憲草案は人権と自由の抹殺につながる規定を含む総合体系的治安立法」と断じた。

 改憲草案21条2項で「前項(表現の自由保障)にかかわらず、公益・公の秩序を害する目的の表現の自由並びに結社の自由は認められない」とした自由抑圧に注目。明治憲法下の治安維持法で「国体を変革し私有財産制度の否認することを目的とする結社を組織しまたは情を知りこれに加入したるものは、死刑、無期又は7年以上の懲役に処する」との規定や、旧新聞紙法42条の「皇室の尊厳を冒瀆し、政体を変壊し、国憲を紊乱する記事を掲載した新聞紙の発行人、編集人、印刷人は、2年以下の禁錮または300円以下の罰金に処する」とほとんど変わらない、表現の自由、報道の自由を扼殺する条文と批判した。

 さらに、改憲草案19条の2は「何人も個人に関する情報を不当に取得し、保有し、又は利用してはならない」としているうち、「不当に」であって「違法に」なっていないことから、現行の個人情報保護法の何倍も厳しい取材規制を招く、と予測する。

 改憲草案98条、99条に規定されている緊急事態宣言では、福島第一原発事故のような苛酷事故が起こったとき、餓死した牛、人のいない町、自殺した酪農家の残した落書きなど悲惨さを訴えうる写真、報道は苛酷な規制にあう、と見ている。

 こうした人権抑圧の草案の内容がまったく知られていないと指摘。メディアは、せいぜい96条の改憲発議要件や国防軍規定のわずかだけ報道しているにすぎない、と論評している。

 前日本弁護士連合会(日弁連)事務総長の海渡雄一弁護士は4月25日に都内で開いた所属する東京共同法律事務所の憲法講演会で、 ・・・ログインして読む
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筆者

川本裕司

川本裕司(かわもと・ひろし) 朝日新聞社会部記者

朝日新聞社会部員。1959年生まれ。81年入社。学芸部、社会部などを経て、2006年から放送、通信、新聞などメディアを担当する編集委員などを経て、19年5月から大阪社会部。著書に『変容するNHK』『テレビが映し出した平成という時代』『ニューメディア「誤算」の構造』。

 

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