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非日常の入り口としてのホールと劇場法

菘あつこ フリージャーナリスト

 大阪・中之島のフェスティバルホールが、4月10日、再オープンした。新朝日ビルの建て替えにともなって休館して以来、約4年ぶりに目の前に現れたホールは、これが朝日新聞のWebサイトだからいうわけではなく、本当に、演目が始まる前からトキメクことができる──そんなホールにと、魅力が数段アップしていた。

 今、バレエやダンスのことを記事にするため日々劇場に通う私が、初めて全幕バレエを観たのは旧フェスティバルホールだった。ずっと「バレエが好き」と両親に訴えて、小学校高学年で初めて連れて行ってもらったバレエ公演、その時の嬉しさは今もはっきりと覚えている。その後、中学生、高校生、大学生、社会人と進む中で、ジョルジュ・ドン、マイヤ・プリセツカヤ……その他、その他さまざまな素晴らしいダンサーの踊りを旧フェスティバルホールで観て来た。それが、2008年12月、ボリショイ・バレエの舞台を観た後、しばらくの休館。待ちに待ったオープン日を迎えた。4月20日、初めてのバレエ公演(熊川哲也率いるKバレエカンパニーの「ベートーヴェン 第九」)を観るため、新しいフェスティバルホールに向かったのだ。

 まず、ビルに入ると目の前に紅い絨毯が敷かれた51段の広い階段が現れ、圧倒される。“非日常”への入り口──という感じ。海外の劇場に行くと建物の非日常感が凄いなぁと思うことがあるけれど、フェスティバルホール、負けていないぞ。ロビーに入って客席に向かうのは、まるでテーマパークのアトラクションさながらの長い3本のエスカレーター。「このホール、開演ギリギリに着いたら間に合わないな」などと現実的なことも考えながら、どんどん非日常の世界に連れて行かれた。本当に良いホールができたと思う。音の良さは皆さん、口を揃えておっしゃる通り。以前、一番前の席だとトゥ・シューズの先が見えなかったが、きちんと解決されている。この日の『第九』の内容に関しては、既に新聞評を書かせていただいているので置いておこう。とにかく心地よい時間が過ごせた。

 前回、書いた大阪にオペラ・バレエを上演する劇場がないという問題、「じゃぁ、解決されたよね」、めでたしめでたし──と思われるかもしれない。確かに素晴らしい一歩である。だけど、やっぱりフェスティバルホールだけでは、大阪の都市規模ではダメだと私は思うのだ。

 フェスティバルホールは、大阪の中心地にあって、オペラやバレエだけではなく、ポップスなどテレビで有名な歌手のコンサートなども行う多目的な劇場だ。大阪にはこういう施設が不足していて、これは、オペラ・バレエが独占できるものではなく、ここは旧ホールの時同様に、さまざまな人にとって“特別”な、“ハレ”の日の場として機能して行けば良いと思う。

 一方、大阪には、やはり公共的な“劇場”も必要だと思うのだ。昨年2012年6月27日、国会で劇場法(劇場・音楽堂等の活性化に関する法律)が施行された。“劇場”とは何か? 日本では各都道府県に建物としての劇場や文化ホールはあっても、ただ貸館、貸し会場としてしか機能していない例が多い(大阪市内は、その貸し会場すら不足しているわけだが)。そうではなく、劇場は、建物だけあっても不十分、そこで芸術活動が行われているべきで、そのために努力することを目指すべきとされている法律だ。

 みなさんは、日本公演の告知などで、「○○歌劇場」という団体名のオペラやバレエのチラシをご覧になることがあるのではないだろうか? これは何も、 ・・・ログインして読む
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筆者

菘あつこ

菘あつこ(すずな・あつこ) フリージャーナリスト

立命館大学産業社会学部卒業。朝日新聞(大阪本社版)、神戸新聞、バレエ専門誌「SWAN MAGAZINE」などに舞踊評やバレエ・ダンス関連記事を中心に執筆、雑誌に社会・文化に関する記事を掲載。文化庁の各事業(芸術祭・アートマネジメント重点支援事業・国際芸術交流支援事業など)、兵庫県芸術奨励賞、芦屋市文化振興審議会等行政の各委員や講師も歴任。著書に『ココロとカラダに効くバレエ』。

 

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