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いざ始動!京都市の待機児童対策

薄雲鈴代 ライター

 ひとくちに「待機児童ゼロ」といっても、現場はたいへんだ。

 大都市のように千人単位の待機数ではないにしても、京都においても毎年、保育園に入れない待機児童が百数十人ほどいる。

 市営で26か所、さらに民営で228か所、どの保育園も定員をはるかに超えて(20%以上)受け入れても、まだ十分ではない現状である。京都には昭和25年に発足した「昼間里親」という独自の制度がある。

 いかに「昼間里親~京みやこ・ベビーハウス」が凄いかというと、産休明けから3歳未満の子どもを、経験豊富なお母さんが家庭保育のような形で子どもたちを受けいれるのだ。一軒のお宅で5名~10名ぐらいの子どもを預かる。園舎ではないけれど、入園条件も保育園と同じで、保育園の分園のようなスタイル。それでいて家庭の落ち着いた雰囲気の中で子どもを託せられる。

 京都に昼間里親制度があったにもかかわらず、知らなかった私は、そのむかし「ご家庭の誰かが面倒をみるか、親戚にでもお預けになったら」といわれたのを覚えている。当時、産休明けに仕事復帰するにも、子どもが小さすぎて預ける手立てがなく、困っているお母さんを幾人も知っている。それも今はむかしの困りごと。
さらに京都市では、この春から「小規模保育事業」が展開されている。保育ルームの一室で保育士さんが保育するグループ型と、民間の保育園が実施する保育士さんによる家庭的保育。ともに待機児童ゼロに向けての大きな一歩である。

 大都会にくらべると、京都の環境はのんびりとしていて恵まれていると思う。たくさんのお寺が、境内の一角に保育園を併設しているので、町を歩いていると、いつも子どもたちの朗らかな声が聞こえている……、というような和やかなイメージを抱けるのは、あくまで傍目からのこと。常に保育士さんの手は足りず、定員オーバーの保育園。にもかかわらず、まだ入園できない児童も眼前にいる。

 わたしの周辺を見るにつけ、大都市横浜の桁外れの待機児童ゼロ対策は、やはり偉業なのだと思う。大学で児童学を教える先生に話を伺ったところ、「待機児童対策は、地域性、その土地の価値観が大きく反映するので、その土地に根ざした受け入れ方を展開しなければ」といわれる。つまり、横浜のスタイルが、どの土地にも適応する万能な鋳型にはならないのだろうが、それでも、各区役所に設置された「保育コンシェルジュ」は、画期的だと見ている。

 常に保育施設の空き状況を把握していて、さらにその子どもに合った保育園選びまで手伝ってくれる。コンシェルジュは、自らの子育て経験を生かしながら相談に応じてくれる。わからないことだらけの若い母親にとって、しかも核家族で頼れる祖父母のいない者にとっては、心強い道先案内人である。紋切り型のお役所の窓口では、けんもほろろに断られ、呆然と立ち尽くすことがよくある。その時に、子育て支援のエキスパートがいてくれるのは、なにより凄いことである。京都においても、「京都市子育て支援総合センターこどもみらい館」をはじめ、子どもに関する相談窓口は大きく開かれている。むかし思った「あったらいいな」の救いの手が、今はいくつも差し伸べられている。

 昨今、待機数を減らすことが大きな目標として謳われている。もちろん、待機児童がたくさんいる現状では、ゼロへ向かうのが優先課題であろうが、その後の現実も待ち構えている。

 いま保育園に通っている子どもも、いずれ小学校へ上がる。就学すれば、働くお母さんの負担は軽減されるのかといえば、とんでもない。保育園の時よりも、不安定なのが小学校低学年である。わたしの同僚は、小学校一年の子どもをかかえ、朝、熱を出したといっては、一時保育の園舎に駆けこむ。家から職場までの道のりに、いくつもの保育所を把握していて、いざという時に預けられるところを確保している。まずは家の近所の区の保育所。しかし日に、5名から10名という先着順なので、そこが駄目なら、次に民営の保育所に当たっていかなければならない。仕事を抱える身で、一刻一秒を争う朝に、具合の悪い不機嫌な子どもを連れて、保育園巡りとは泣くに泣けない。しかも金銭の負担がのしかかってくる。京都市の一時保育は日額1200円だが、民営だと1時間が1000円前後となる。さらにパーキングのように30分単位で加算されていくので気が気でない。

 働くお母さんが、身を粉にして働いても、それがその日の保育料に右から左では、何をしていることかとなる。これも子どもを抱える母親と保育所の日常の一端である。

 保育園は就学前の子どもを預かるだけではない、毎日波瀾ずくめである ・・・ログインして読む
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筆者

薄雲鈴代

薄雲鈴代(うすぐも・すずよ) ライター

京都府生まれ。立命館大学在学中から「文珍のアクセス塾」(毎日放送)などに出演、映画雑誌「浪漫工房」のライターとして三船敏郎、勝新太郎、津川雅彦らに取材し執筆。京都在住で日本文化、京の歳時記についての記事多数。京都外国語専門学校で「京都学」を教える。著書に『歩いて検定京都学』『姫君たちの京都案内-『源氏物語』と恋の舞台』『ゆかりの地をたずねて 新撰組 旅のハンドブック』。

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