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 野球・ソフトボールが2020年オリンピックの競技候補に残った。予想外との意見もあるようだが、冷静かつ客観的に考察すれば当然の結果とも言える。その理由は次の二つだろう。

(1)選考にかけられた8競技の中で最多数1億人の競技人口を有している

(2)国際オリンピック委員会(IOC)が契約するテレビ放送権利料のうち、野球・ソフトが盛んな米国と日本がその約60%を支払っている(米国50%、日本10%)

 とはいえ、野球・ソフトが絶対的に有利な位置にいるかと聞かれると、「そうではない」と答えざるを得ない。

 競技人口は多いものの日常的に試合がおこなわれる国と地域が限られるため、開催都市によっては、4~5万人収容の野球場を新設しても、五輪が終わったあと使われなくなることもあり得る。これでは競技の普及に繋がらない。IOC委員が野球・ソフトの選択に苦慮する理由がここにある。

 さらに、米国メジャーリーグ(MLB)選手の参加が保証されていないことも大きい。世界最高峰の選手が参加しない五輪競技が、世界一の競争を要求するIOCの基本方針に添わないことは明白だ。

 MLBのオーナー(経営者)はMLB選手の五輪出場になぜ消極的なのだろうか。

 国際大会に選手を出場(リリース、解放)させる制度は1870年に始まったと言われる。英国のイングランドとスコットランドの代表が試合をすることになり、そのためイングランドのサッカー協会は傘下のクラブに、代表として指名された選手を無償でリリースすることを命じた。当時はプロ選手は存在せず、また、「アマチュアリズム」を考案した英国での試合であり、「無償」出場は当たり前のこととして受け止められた。

 その後、このシステムは世界中に広まった。五輪のようにアマチュアリズムの下で行われる国際大会での出場選手は無償での参加が常識と化し、プロも参加できる国際サッカー連盟(FIFA)のワールドカップも、FIFAが稼ぐ収入が少なかったこともあって、今日に至っても国際大会に出場する選手は無償参加が原則となっている。

 だが、この原則はMLBの経営者やその他プロリーグの経営者にとって理不尽この上ないものになってしまった。例えば、MLBの選手、特に出身国代表として五輪に出場するような選手の年俸は途轍もなく高い。平均すると軽く10億円を超えるに違いない。これら高給取りの選手が五輪の試合中にケガをして、シーズンの残り、またはそれ以上の期間、チームから離脱した場合、球団は年俸相当額をどぶに捨てたのと同じになってしまう。

 松坂大輔投手(現在、クリーブランド・インディアンス)の例が分かりやすい。彼は、 ・・・ログインして読む
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筆者

大坪正則

大坪正則(おおつぼ・まさのり) 大坪正則(帝京大学経済学部経営学科教授)

1947年生まれ。1970年、伊藤忠商事に入社。1981~85年まで、アメリカのニューヨークとデンバーに駐在。情報通信総合企画室などを経て 1986年、NBAプロジェクトマネジャーに。現在、帝京大学経済学部経営学科教授。専門はスポーツ経営学。著書に『パ・リーグがプロ野球を変える』『スポーツと国力』(以上、朝日新書)、『プロ野球は崩壊する!』(朝日新聞社)、『メジャー野球の経営学』(集英社新書)など。2014年3月4日、死去。

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