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見えてきた「東京五輪」――日本が主導すべきこととは?

大坪正則 大坪正則(帝京大学経済学部経営学科教授)

 6月25日、国際オリンピック委員会(IOC)が2020年夏季オリンピック(五輪)候補都市に関する評価報告書の内容を公表した。

 これまで競争相手と比較して、誰もが納得するだけの理念・ビジョンに欠けるために、やや劣勢とみられてきた東京が、全体として前向きな評価を受けたようだ。そのため、「欧州とアジアの2大陸の懸け橋」「イスラム圏初」という二つの強力な説得材料を有するイスタンブール(トルコ)及び3大会連続の招致活動を行うマドリード(スペイン)に肩を並べたと楽観視する向きもあるようだ。

 これからの2カ月間、IOCの調査委員が投げかけた課題を克服し、そして、東京都知事の不用意な発言の悪影響を払拭すると共に近隣諸国との緊張関係を緩和する方向に持っていければ互角の戦いが期待できそうな雰囲気になってきた。

 さて、東京のライバル2都市に対して、IOCは次の懸念要因を指摘した。イスタンブールには国境を接するシリアの紛争、また、マドリードには金融不安と国内経済の停滞である。しかし、これらはさほど大きなマイナスにならないと考える。

1)イスタンブール

 隣国ゆえに、トルコがシリアの紛争に全く無関係との立場を貫き通すのは難しいだろう。だが、紛争の当事者ではないし、五輪開催は7年先、さらにシリアの問題は世界レベルで、特に米国とロシアが中心になって解決を図るであろうことを勘案すると、シリア紛争はイスタンブール外しにつながらないと考えるほうが妥当だ。逆に、IOC委員がシリア紛争にこだわると、スポーツを通じての「世界平和」を標榜する五輪の精神に反するとして非難を浴びることもありえる。

2)マドリード

 もはやEU諸国の金融不安はスペイン一国で解決できることではない。スペイン国民が緊縮財政に耐えることが最も重要ではあるが、同時に、EU全体の協力が不可欠である。万一、投票権を持つ欧州出身のIOC委員が金融不安を理由にマドリードを除外したら、彼らはEU諸国から必ず批判されるだろう。彼らがそんなリスクを犯すはずがない。

 今回の五輪選考において、以上のことはすでに常識論だが、昨今の世界情勢及び新IOC会長選挙を勘案する時、今こそ2020年及びそれ以降の五輪のあり方について発想を大きく転換する時期だろう。

 だとすれば、手前味噌になるかも知れないが、以下の3項目をうまくクリアできれば、東京がトップに躍り出ることも十分ありえる。

1)過大となった会場建設費の抑制

 ブラジルで大規模なストライキが頻発している。来年に迫った国際サッカー連盟(FIFA)主催のワールドカップ(W杯)開催に備えて投下されるスタジアム等の建設費よりも生活に直結する案件に予算を配分すべきだと国民が不満を訴えているのだ。

 この動きがW杯の後に控える五輪に少なからぬ影響を与えることは必至だ。国民の圧倒的支持を受けてW杯と五輪を招致しておいて「今さら」との感じは禁じえないが、不満をアピールすることも時代の流れかも知れない。

 また、2014年冬季五輪を控えるロシアのソチにも既に4兆円をはるかに超える資金が費やされたという。五輪をテコに、ソチに至るアクセスや周辺の施設充実を計ってソチを世界の保養地にするのがプーチン政権の意図と推察されるが、そんな手法は古臭い。LNGの価格が低下傾向にある現在、ロシア政府は国民に犠牲を強いることになりかねない。

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筆者

大坪正則

大坪正則(おおつぼ・まさのり) 大坪正則(帝京大学経済学部経営学科教授)

1947年生まれ。1970年、伊藤忠商事に入社。1981~85年まで、アメリカのニューヨークとデンバーに駐在。情報通信総合企画室などを経て 1986年、NBAプロジェクトマネジャーに。現在、帝京大学経済学部経営学科教授。専門はスポーツ経営学。著書に『パ・リーグがプロ野球を変える』『スポーツと国力』(以上、朝日新書)、『プロ野球は崩壊する!』(朝日新聞社)、『メジャー野球の経営学』(集英社新書)など。2014年3月4日、死去。

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