2013年09月06日
誰かが自ら命を絶った時、その人が有名な人ならば、ありし日の動画や写真などを使ってテレビや新聞は報道する。
無名の人の場合でも、大震災による失業とか原発事故による帰郷困難での絶望という社会的な背景が考えられる時、やはり遺書や自殺現場の映像、写真などでくわしく伝える。
その際、記者たちは「できるだけリアルに」と現場を生々しく表現しようとする。たとえばテレビならレポーターが自ら歩き回り、身振り手振りでどこからどうやって身を投げたかを再現しようとする。事件や事故を「できるだけリアルに」と伝えることは、テレビ報道に携わる人間にとっては言われるまでもない至上命題だからだ。
ところが、こうした報道の仕方がWH0(世界保健機関)の定める「自殺報道のガイドライン」に違反していると自覚する報道関係者はあまり多くはない。
8月下旬に起きた歌手・藤圭子さんの自殺についての報道でもこの違反が繰り返された。
国連の専門機関であるWHOが定めた「自殺報道のガイドライン」。
それは模倣自殺を防ぐ目的で定められている。有名人が自殺して、大きく報道されると模倣自殺が増える。世界的な研究でも統計的な相関関係が明らかになのだ。たとえば、日本では1986年の歌手・岡田有希子さんの自殺。2011年のタレント・上原美優さんの自殺。いずれも後追いで模倣自殺する者が相次いだ。
内閣府のホームページにはWHOのガイドラインが日本語に翻訳されて掲載されている。(「WHO 自殺予防 メディア関係者のための手引き」 2008年改訂版日本語版 http://www8.cao.go.jp/jisatsutaisaku/link/kanren.html )
この「手引き」には報道関係者が自殺を扱う場合の「クィック・リファレンス」として11項目が掲げられている。
内容は以下の通りだ。(番号は便宜的に筆者がつけたもの。)
(1) 努めて、社会に向けて自殺に関する啓発・教育を行う。
(2) 自殺をセンセーショナルに扱わない、当然のことのように扱わない。 あるいは問題解決法の一つであるように扱わない。
(3) 自殺の報道を目立つところに掲載したり、過剰に、そして繰り返し報道しない。
(4) 自殺既遂や未遂に用いられた手段を詳しく伝えない。
(5) 自殺既遂や未遂が生じた場所について、詳しい情報を伝えない。
(6) 見出しの付け方には慎重を期する。
(7) 写真や映像を用いる時にはかなりの慎重を期する。
(8) 著名な人の自殺を伝える時は特に注意をする。
(9) 自殺で遺された人に対して、十分な配慮をする。
(10)どこに支援を求めることができるのかということについて、情報を提供する。
(11)メディア関係者自身も、自殺に関する話題から影響を受けることを知る。
ガイドラインでは「自殺に傾いている人は、自殺の報道が大々的で目立つものであったり、センセーショナルであったり、自殺の手段を詳しく伝えられたりすることで、その自殺に追随するように自殺することに気持ちがのめりこんでしまう」として、(1)から(11)までの項目のさらに細かい注意点も列記されている。
それは以下のような文だ。
「自殺に関する新聞報道は、第一面や、
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