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“全自動車”はGoogle Carのように簡単ではない

倉沢鉄也 日鉄総研研究主幹

 去る8月下旬、日産が「人がハンドルやアクセルを操作しなくてもよい“自動運転車”を、2020年までに市販する方針を明らかにした。これに先立ってトヨタが1月に米国で公道を走行可能な試験車両を公開している。これらにさらに先行して「黒船」Googleがすでにネバダ州で市販車を改造しての公道実走試験を2012年から開始している。

 日本政府側でもe-Japan戦略の第5弾にあたる「世界最先端IT国家創造宣言」に「2020年代中には自動走行システムの試用開始」「2020年までには交通事故死者数が人口比で世界一少ない国を目指す」と記して、事実上の閣議決定をした。国交省ほか担当官庁もこのスケジュールにあわせてこれまで積み上げた研究開発を再加速させる。日産の発表はこの政策決定のタイミングとシンクロしたものであり、トヨタ、ホンダ等このプロジェクトに参画する国内自動車メーカーも公式発表は時間の問題である。

 そうしたことから、報道は一斉に「夢の自動運転実現へもうすぐ」と楽しげに報じている。こうした自動運転を取り扱ってきた官民連携プロジェクト「ITS(アイティーエス)」の最大の国際会議兼コンベンション「ITS WORLD CONGRESS(ITS世界会議) 2013」が10月に初めて東京で開催されることもあって、この認知拡大の状況自体は、前向きに捉えたい。

 せっかくの機会なので、この全自動運転の技術がどこまで来て、あとは何が必要なのかを簡潔に述べておく。その結論として、各社報道で書かれているような簡単なものではないこと、かつて未来図に書かれたような
‘全自動車’が現代社会の中で実現するには、多数の壁を越えなければならないこと、を知っていただきたいと思う。

◆自動車だけでは全自動にできない壁
 今回一連の報道で実験走行しているのは、自動車に装着したIT機能で自動車を制御する、車両自律型のシステムである。人や車を感知できるのは赤外線や可視光線が届く範囲でしかなく、物影からの出会いがしらの衝突や落下物の回避などの情報は道路側から感知して自動車に伝えるしかない。出会い頭で急に回避や停止を試みても事故は避けられない。この路側のセンサー~アンテナと自動車が連携したシステムにならないと、事故はかえって深刻なものになる。中途半端な全自動車が道路上で最も危険な乗り物である。

◆自腹で買った自動車は政府が作った道路の上を走るという壁
 この協調対象となる道路は、官の所有物である。走っている自動車は、

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筆者

倉沢鉄也

倉沢鉄也(くらさわ・てつや) 日鉄総研研究主幹

1969年生まれ。東大法学部卒。(株)電通総研、(株)日本総合研究所を経て2014年4月より現職。専門はメディアビジネス、自動車交通のIT化。ライフスタイルの変化などが政策やビジネスに与える影響について幅広く調査研究、提言を行う。著書に『ITSビジネスの処方箋』『ITSビジネスの未来地図』など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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