2013年09月17日
“芸術”という言葉を口に出すと、「芸術は爆発だ!」という岡本太郎の名言を思い出す人が日本人には多いような気がする。私は最近、この有名すぎる言葉が日本人に誤解をもって受け取られているのではないだろうか、と思うことが多い。岡本太郎が悪いわけではないのだが、「芸術は爆発だ!」と言われることで、「何をしてもいいんだ」思わせてしまって、そうすると芸術が余計に「何だかよく分からないもの」になっているような気がするのだ。
芸術は確かに爆発だ、それは間違いではない、私もそう思う。ただ、私が思うのは、それは最終段階のこと。地道な積み重ねがコツコツコツコツ……気の遠くなるほどあって、その上でさまざまなラッキーな条件が重なった時、最後の最後の瞬間に幸福な爆発をする──それが素晴らしい芸術。私はバレエやダンスを中心とした舞台芸術が専門なのだが、生の舞台を観ていてそういう瞬間に出会うことができれば、それは至福の時だ。
一方、例えば、幼児が絵の具をぶっちゃけた、そこに面白い模様ができてこれはすごい・・・等々というのは、芸術の芽がそこにあるとか、その自由な感性を大切に育てようという思いのきっかけににはなるかもしれないけれど、それそのものは優れた芸術とは言えないと思う。だが、日本では、そのあたりが混同されているような気がするのだ。
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください