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古式ゆかしい秋の京に覚醒するスピリチュアル感

薄雲鈴代 ライター

 錦秋の候、紅葉を愛でに人はこぞって京都へやって来る。

 私が通勤につかうJRバスは、紅葉の名所高雄を通っているため、早朝6時台の始発からぎゅう詰めの状態だ。普段は数人しか乗っていないバスに、吊革が足りないほど人が乗り合わせ、ここ数年、樹々の色づきを計るよりも、観光客の多さを眺めて「あぁ秋も闌(た)けた」と感じる始末。実際、今朝見渡したところ、美しい紅葉とは言い難い。葉がカサカサしていて、瑞々しくないのだ。それでも人は、秋になると京都へ出かけたくなる。

 11月23日に京都は祭事が多い。現代人はカレンダーを見て、なるほど連休だからイベントが多いのかと早合点するが、観光客に迎合しての催しではない。あくまで23日という日を大事にしているのである。古代より、五穀の実りに感謝する新嘗祭が行われた日である。現在は勤労感謝の日と改められているが、京都の神社ではこの日「お火焚き」を行うところが多い。

 境内で盛大に火を焚き、春さき里に降りてこられた神さまに五穀の感謝をささげる。古里によっては、浄火の煙りに乗って神さまが山へお帰りになると言い伝えるところもある。

 新米でできた「おこし」と御火焚饅頭、そして蜜柑が供えられる。蜜柑は浄火の中に入れて焼きミカンにするところもある。風邪予防、中風封じ、無病息災を意味する。それら神さまのお下がりは、そのまま参詣者や町内の氏子の家々にふるまわれる。

 風習やしきたりを何も知らない学生時代、京都の下宿ですごしていると、いきなりお饅頭やら蜜柑の入った袋をもらって面食らったことがある。「おしたきさんやから」という近隣のおばさんのことばも馴染みがなく、食べていいのかどうか、しばらく怖々と眺めたものだった。

 毎年変わらず、11月になると京の町の和菓子屋さんには、御火焚き饅頭が店頭に並ぶ。宝珠(一説には火の象形文字とも)が刻印された紅白の饅頭である。そして1か月にわたり、

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筆者

薄雲鈴代

薄雲鈴代(うすぐも・すずよ) ライター

京都府生まれ。立命館大学在学中から「文珍のアクセス塾」(毎日放送)などに出演、映画雑誌「浪漫工房」のライターとして三船敏郎、勝新太郎、津川雅彦らに取材し執筆。京都在住で日本文化、京の歳時記についての記事多数。京都外国語専門学校で「京都学」を教える。著書に『歩いて検定京都学』『姫君たちの京都案内-『源氏物語』と恋の舞台』『ゆかりの地をたずねて 新撰組 旅のハンドブック』。

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