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Androidは自動車のよい部品にはなりそうもない

倉沢鉄也 日鉄総研研究主幹

 すでに5年以上自動運転車に取り組んできたグーグルが、1月上旬に自動車の情報システムの開発でホンダやGMなど5社と提携すると発表した。自動運転車を共同開発するのではなく、自動車のドライバー向け情報提供、排気系の故障や軸重のバランスなど直接的な運転制御以外の車両内の情報収集と命令、ネットワーク上への発信とサーバーからの受信、などを統合したOSで動かすための、いわば自動車部品の開発提携と考えられる。もちろん将来的には運転制御の車両開発参加まで視野に入れるグーグルと、社内のOSについて包括的に発注することで経費削減が図れる自動車メーカー側の、同床異夢の思惑も合致した、ということであろう。

 しかし残念ながら、この提携の将来は明確に見えている。世界の自動車メーカー複数を相手にして、いかにグーグルといえども絶対に覆せない、自動車産業100年のビジネス構造が、おそらくは読者みなさんがポジティブに想像する、グーグルがレガシー産業を統治する姿を絶対に実現させない。

 それは、自動車メーカーという、組み立て工程とその構成部品に絶対の信頼を込めて商品の価値としている企業は、自らの完全な品質管理と試験工程を経ない部品を絶対に採用しないということだ。Android OSは、というよりもコンピューターの汎用ソフトウェア一般は、常にその商品が「次世代へのアップバージョン前」という未完成品であり、必ず何らかの不具合を抱えている。自動車の部品に、アップバージョンという概念は絶対に許されないものだ。

 自動車事故を起こさなければ深刻でない、のではない。自動車に搭載される技術は、すべて「枯れた」技術でなければならない。自動車の不具合は、リコールという法制度の下に、すべて無償交換になる。たとえ運転に何の支障もない、椅子の布や内装の塗料がはがれる事態であっても、だ。自動車に「バグ」「セキュリティホール」は一切許されない。事故を起こすかどうかでなく、自動車という商品に対して100年間社会が求めてきた法制度の帰結だ。

 これは宇宙や軍事についても同じで、最先端と言いながら、実は実験レベルでは絶対に近い品質を保証された技術だけが搭載されている。だからこそ、

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筆者

倉沢鉄也

倉沢鉄也(くらさわ・てつや) 日鉄総研研究主幹

1969年生まれ。東大法学部卒。(株)電通総研、(株)日本総合研究所を経て2014年4月より現職。専門はメディアビジネス、自動車交通のIT化。ライフスタイルの変化などが政策やビジネスに与える影響について幅広く調査研究、提言を行う。著書に『ITSビジネスの処方箋』『ITSビジネスの未来地図』など。

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