2014年02月11日
NHK籾井会長の就任記者会見をおさめた動画を見た。うんざり感とデジャヴ感でいっぱいになった。よくいる「地位は高いが、まったく尊敬できない男性」そのものだったからである。
氏は「豪放磊落」と評されるそうだ(注1)。悪口にならないように表現しようとすれば、そういっておくしかなかろう。就任前の所信表明を聞いたNHK経営委員のひとりは「見識がなさ過ぎる。選んだこと自体、嫌になる」と語っていたという(注2)。選んだのは自分たちではという非難よりも、分かる!という共感のほうが先だつ。
籾井氏はなぜこんなに人をうんざりさせるのだろうか。特定秘密保護法、首相の靖国参拝、領土問題の報道にかんする考え方が政治的に公平でない、「慰安婦」をめぐる事実関係を把握していない、というのはもちろんだ。が、そういったNHK会長としての資質といった部分よりもっとベーシックな水準での、組織の上のほうの人が持ちがちな「イヤさ」が氏にはあると思う。たとえていうなら、自分の上司がこういう人物だったらかなわんなぁ、というような「イヤさ」である。
そこでこの記事では、籾井氏がいやおうなく漂わせる「イヤさ」が何なのかを探りたい。会見動画をもとに具体的な発言、態度を分析した。結果、出てきたのは、自分の主張の根拠を自分で挙げられず、のみならず、根拠を求めた相手に逆ギレし、言い訳がましく、人を恫喝し、意味不明の発言をし、自分の発言がどうとられるか客観視できない籾井氏の姿であった。これ、イヤな上司そのものではないか。
以下ではその詳細について述べる。もとにした資料は、ニコニコ動画にあげられている動画 (注3)である。ブロガーによる会見の一部の書きおこし(注4)、朝日新聞デジタルの会見詳報(注5)も補助的に用いた。
なお、「慰安婦」制度をめぐる事実関係のあやまりについては、専門家の林博史教授が『神奈川新聞』でおこなっている。ウェブで見られるのでぜひこちら(http://news.kanaloco.jp/localnews/article/1402050004/)を参照されたい。
籾井氏にみる「こんな上司はイヤだ」その1。自分の主張の根拠を自分で挙げられない。のみならず、根拠を求めた相手に逆ギレする。
主張の挙証責任(証拠をあげる責任)は主張した本人にあるというのが議論の大原則である。しかし、籾井氏はこの責任を果たそうとしない。「戦時慰安婦」は「どこの国にもあった」という籾井氏の発言を受け、記者が質問するシーンである。
記者 「何か証拠が?」
籾井 「え?」
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