聞き手:矢田義一WEBRONZA編集長
2014年02月28日
Q. ソーシャルメディアの様々な言論を前向きに生かしていくにはどうすればいいのでしょうか。
田中 「ソーシャルメディアは多様な意見空間」だと言われてきました。しかし、ウェブ上のメディア言説を研究しているなかで、見方によっては実はあまり多様で無いことに気付かされることがあります。もちろん、マスメディアでは見られないような少数意見もあることはありますが、意見の割合やバランスとして掴み直した場合、マスメディアよりも偏りが激しく、ソーシャルメディアでは少数派の意見が目立たなくなっていることも多々あるのです。
結局のところ、ソーシャルメディア空間においては、マスメディアが提出した話題の中の部分部分が増福されていくので、全体として決して多様とは言い難い状況が、しばしば生まれている。ニック・デイビスが指摘しているように、今の時代は、情報のチャンネルが非常に多様化しているけれども、実は、その中を流れるコンテンツはひどく質と種類は貧困で、情報の流れもモノポリー(寡占)化している。
アマゾンのリコメンド機能は買ってもらうためにある機能です。その情報を与えて深く考えてもらうためではありません。同じように、情報を商品として扱う場合、その情報を受け取ってじっくりと吟味して方向にはどうしても行かず、断片化した情報をどんどん消費してもらうことを促す方にいくわけです。
各社のニュースアグリゲーション・サービスでもそういう傾向はあり、危ういバランスの中で、それにむしろ抗っていると言えるでしょう。この「抗える」度合いは、経営状況が安定しているほど増える。ヤフーニュースなどの勝ち組ニュースサイトは、まずクリック数が稼げるという前提があるからこそ、社会的に意義があるニュースを入れることができる。それでも、各種のニュースアグリゲーション・サービスを横断的に、定量的に見ていると、これは「バズる」というキーワードを入れざるえない事情がうかがえます。
Q. そうした傾向はこれからも続くのでしょうか
田中 この「一見すると多様なようで、実は貧困な情報環境」に向かう状況は、当面のあいだ続くでしょう。先の指摘にも重なりますが、情報の流れにおける政治経済的分析を重ねているジョセフ・トゥローらも指摘しているように、情報やニュースの分野では極めて多くの数のプレーヤー、つまり「ニュース」提供元が登場しているが、実際にその情報やニュースを「生産」しているのはフォックスとかディズニー、ワーナー・グループなど
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