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国際放送「NHKワールドTV」はどう変わるのか

川本裕司 朝日新聞社会部記者

 「国際放送は国内とは違う。領土問題については、明確に日本の立場を主張するのは当然のこと。政府が右と言うことを左と言うわけにはいかない」

 NHKの籾井勝人会長が1月25日の就任会見で、海外に向けてテレビとラジオで発信している国際放送が想定していなかった注目の集め方をしている。

 不適切発言を連発し後で取り消した就任会見で、籾井会長が重要課題のひとつにあげたのが、国際放送の強化だった。

 NHKの国際放送は、外国人向けの「NHKワールドTV」(英語)と邦人向けの「NHKワールド・プレミアム」(日本語)のテレビ2波と、日本語と13言語で伝える「NHKワールド・ラジオ日本」がある。これまでも拡充に努め、10年3月に1億2500万世帯だったNHKワールドTVの世界中での視聴可能世帯が、13年11月には2億7000万世帯に増えた。しかし、英BBCや米CNNなどに比べ知名度が劣るのが悩みのタネだ。国際発信に力を入れる中国国営中央テレビ(CCTV)の影響力アップも見過ごせない。

 自民党の領土に関する特命委員会は昨年12月、「我が国の領土に関する正しい立場の発信に努めること」を安倍首相に提言。NHK国際放送について「予算を含め政府として支援を強化」するよう求めた。

 籾井会長も会見で「国際放送で、尖閣(諸島)、竹島、こういう領土問題については、明確に日本の立場を主張するのは当然のことだと思います」と、自民党と重なる認識を表明した。

 NHKは「世界に向けた情報発信の強化」を掲げ、2014年度予算では、国際放送費を171億5000万円(うちテレビ35億3000万円)と、前年度より13億4000万円上回り、伸び率も8.5%増と重点分野となっている。

 95年から始まったテレビ国際放送「NHKワールドTV」は99年から24時間放送となり、08年からは外国人向けチャンネルと位置づけ、すべて英語になっている。14年度からは4時間単位だった番組の基本編成を6時間単位に切り替え、番組数も34から43に増やすことにしている。

 なお、邦人の生命などの保護、国の重要な政策などについて、総務相はNHKに「要請放送」をすることが放送法で認められている。そのための国際放送(テレビ・ラジオ)向けの交付金として、14年度予算では34億5000万円があてられている。ただ、要請放送についても総務相はNHKに編集の自由を配慮するよう放送法でうたわれている。要請する内容を限定することはなく、唯一の例外といっていいのが、06年に当時の菅義偉総務相がラジオ国際放送で「北朝鮮による日本人拉致問題に特に留意するように」と命令を出したときから続く項目だけだ。

 国際放送の強化を求める外部の声は強まるばかりだ。しかし、財源となる受信料は国内の視聴者が支払っている。国際放送費を際限なく増やすことに抵抗感を抱くNHK職員も少なくない。

 日本と外国を行き来し、国際的な情報発信に詳しい寺島実郎・一般社団法人日本総合研究所理事長は、NHKワールドTVのあり方について、 ・・・ログインして読む
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筆者

川本裕司

川本裕司(かわもと・ひろし) 朝日新聞社会部記者

朝日新聞社会部員。1959年生まれ。81年入社。学芸部、社会部などを経て、2006年から放送、通信、新聞などメディアを担当する編集委員などを経て、19年5月から大阪社会部。著書に『変容するNHK』『テレビが映し出した平成という時代』『ニューメディア「誤算」の構造』。

 

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