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[27](番外編)オリンピックパークの町に住む(2)

トラブル続出、体力の限界に……

青嶋ひろの フリーライター

 他にも宿のせいではないが、ひどいことはいろいろあった。

 たとえば、注文していたチケットが届かない。今回は経費節減のため、チケットはオークションやネットの売買サイトで購入しており、国内海外含めてあらゆるサイトをチェックして、一番安いチケットを買い求めた。

 団体戦が9000円、男子のショートが10000円、という具合だ(ともにカテゴリーA)。一番高いチケットでも、女子シングルのフリーで、33000円(カテゴリーB)。正規の値段で買えば、7、8万円するものだが、今回はソチというあまりにも行きにくい土地ゆえ、手に入れても行けなくなってしまった方が多かったらしい。ありがたく、譲っていただく。

借りた部屋から母屋を臨む。母屋にも何人も人が泊まっていた様子=撮影・筆者拡大借りた部屋から母屋を臨む。母屋にも何人も人が泊まっていた様子=撮影・筆者
 しかし正規のルートで手に入れなかったものだから、トラブルは相次いだ。

 いい加減な海外のサイトで購入した団体戦のチケットは、なぜかソチではなくロンドンに送られてしまったらしく、一向に届く気配がない。結局その日の試合は、生で見られずじまい。試合開始ぎりぎりまで、家の前でフェデックスを待ち続けていたのだが……。

 女子フリーのチケットも、到着はなんと試合当日の昼間だった。もう絶対に見られない……と諦めていたところに、届いたその1枚の神々しかったこと!

 さらにいえば男子のショートプログラム。チケットはあるのにゲートを通らず、「このチケットは無効だ!」と言われ、オリンピックパークに入れなかったこともある。どうやら記されている席が他の席に振替になっていて、アイスバーグの近くで日本のチケット業者が待機し、新しいチケットに交換してくれることになっていたらしい。それがアイスバーグに入る以前、五輪公園のゲートで「キャンセルド!」と言われ、中にも入れないのである。

 これは、困った。事情を説明しても、「この券は無効だ。我々にはどうすることもできない。日本のオリンピック委員会発行のチケットだから、そちらに問い合わせてくれ」と言われる。日本はもう、22時過ぎなのに! 幸い同じ目にあった日本人同士が結束し、あちこちをたらいましにされた挙句、やっと入場券を1枚ずつ手配してもらうに至る。

 しかしもう試合開始まで、時間がない。へとへとになりながらも、急いで急いで、やっとアイスバーグにたどりつき、そこでやっと代替のチケットを渡される……という顛末。席についたのは、第一グループがもう6分練習を滑っている時間だ。もしまだゲートで立ち往生していたら、羽生結弦の100点越えを見逃すところだった……。

 しかしなぜこいつは、取材者のくせにチケットなど買っているのか。ネット環境はプレスセンターに整っているんじゃないのか。なぜそんなに安い宿で汲々としなければならないのか――。そうお思いの方もいらっしゃるだろう。

 そう、4年に一度のオリンピック、弱小フリーライターには、取材パスが降りないのだ。

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筆者

青嶋ひろの

青嶋ひろの(あおしま・ひろの) フリーライター

静岡県浜松市生まれ。2002年よりフィギュアスケートを取材。日本のトップ選手へのインタビュー集『フィギュアスケート日本女子 ファンブック』『フィギュアスケート日本男子 ファンブック Cutting Edge』を毎年刊行。著書に、『最強男子。 高橋大輔・織田信成・小塚崇彦 バンクーバー五輪フィギュアスケート男子日本代表リポート』(朝日新聞出版)、『浅田真央物語』『羽生結弦物語』(ともに角川つばさ文庫)、『フィギュアスケート男子3 最強日本、若き獅子たちの台頭 宇野昌磨・山本草太・田中刑事・日野龍樹・本田太一」(カドカワ・ミニッツブック、電子書店で配信)など。最新刊は、『百獣繚乱―フィギュアスケート日本男子―ソチからピョンチャンへ』(2015年12月16日発売、KADOKAWA)。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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