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聞こえにくい! 防災行政無線を見直す自治体

川本裕司 朝日新聞記者

 昨年、台風の発生が19年ぶりに30個を超えた。こもったような声で気象警報が聞き取りにくいという指摘がある防災行政無線の見直しに、自治体が動いている。きっかけは津波の恐ろしさを見せつけた3年前の東日本大震災だった。大地震や津波に備え、1990年代半ばに流行したポケットベルの回線利用など新たな伝達手段の導入に乗り出した。

 内閣府が2012年8~10月に東日本大震災の被災3県で約1万1千人に調査した結果では、大津波警報を見聞きした61%のうち、防災行政無線で見聞きした人が54%で、ラジオやテレビなどを抑えトップだった。

 一方、総務省の委託を受けた三菱総合研究所が11年9月から12年1月まで被災3県の3百人にインタビューした結果によると、防災無線で津波などの情報を得られたのは41%。防災無線が行動に影響を与えたのはその半数だった。宮城県名取市では地震直後に市役所内の親局の防災無線機器が故障し稼働しなかった。遺族らの要求で昨年8月に設けられた第三者委員会が原因を究明した。

 総務省によると、64年の新潟地震と68年の十勝沖地震で電話回線が切断したことから、被害状況を把握するため行政機関を結ぶ防災無線が普及した。市町村からスピーカーを通じ住民に伝える防災行政無線は78年から始まった。日本独自の方式といわれる。

 神奈川県茅ケ崎市が12年、住民千人に防災無線のアンケートをした。結果は59%が「聞こえない・聞きづらい」。市は「住宅の気密性が高まっているうえ、風向きによっても影響がある」と分析した。相模湾沖を震源とする大型地震では市内に最大8メートルの津波が予想され、防災無線以外の警報の伝え方を模索した。

 ポケットベルの出力の大きさに着目、防災無線と同じ内容が強制的に聞こえAMやFMも受信する防災ラジオを、ポケベルのサービスを手がける東京テレメッセージと共同開発した。市が補助し1台2千円(別に通信料が税別で年六百円)で購入希望を昨年11月に募ると、「窓を閉めると防災無線が聞こえにくかった」と申し込みが殺到。予定した千台を12月18日から配布を始めたほか、12月議会で9千台分の補正予算を可決、希望者に行き渡るようにした。

 千葉県流山市でも12年6月に防災無線についてアンケートしたところ、「内容がほとんど理解できなかった」「聞こえなかった」の回答が71%に達した。スピーカーに近い世帯からは「うるさい」という苦情が絶えないため、音量を絞り運用していた。音量を上げた昨年6月の調査では、29%だった「理解可能」が50%に増えたが、導入を検討している他社製品の性能確認試験も進めている。

 「防災無線に対する住民の不満といえば『うるさい』だったが、東日本大震災後は『よく聞こえない』に

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筆者

川本裕司

川本裕司(かわもと・ひろし) 朝日新聞記者

朝日新聞記者。1959年生まれ。81年入社。学芸部、社会部などを経て、2006年から放送、通信、新聞などメディアを担当する編集委員などを歴任。著書に『変容するNHK』『テレビが映し出した平成という時代』『ニューメディア「誤算」の構造』。

 

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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