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完璧でなくても将来を約束させた田中将大

出村義和 ジャーナリスト

 「24連勝の最初の一歩だな」と、ヤンキース担当記者の中でも重鎮の米ザ・レコード紙ピート・カルデラ記者はニヤリとしながら筆者の肩を叩いた。田中将大投手(ヤンキース)がデビュー戦を見事に勝利で飾った直後のことだ。「24連勝」とは、もちろん昨年、田中が楽天で達成した大記録のことだ。カルデラ記者はいった。「とても印象的な初登板だったよ。24連勝はともかく、今日の投球を見る限り、相当勝つだろう」

 敵地カナダ・トロントにあるブルージェイズの本拠地は地元開幕戦ということもあって満員札止め、4万8000余の大観衆で膨れ上がった。

 初回、田中のマウンドへ歩む姿には緊張感は感じられなかった。しかし、先頭打者メルキー・カブレラに投じた3球目をいきなり右中間に叩き込まれる。決め球スプリッターが落ち切らず、甘く入ったところを狙われた。
打った瞬間それとわかる一発だった。2回裏には味方の失策も絡んで2失点。

 ハンデを負った投球になったが、ここから彼がよく口にする「粘り」を発揮する。3点目を失った直後の味方の攻撃中に捕手ブライアン・マッキャンと話し合い、自らのアイディアで投球パターンをファストボール系中心に変えた。

 この修正をきっかけに投球リズムを取り戻し、味方打線の援護もあって、7回を6安打3失点に抑え、8三振を奪って勝利投手になったのである。

 結果的には昨年から続く田中の勝負強さ、勝負運といったものが改めてクローズアップされることになったが、アメリカ・メディアが注目し、評価をしたのはアジャストメント(適応、修正の意)能力の高さだ。メジャーリーグの試合はよく『ゲーム・オブ・アジャストメント』と

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