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ポケベルが復活した防災無線事情

川本裕司 朝日新聞社会部記者

 日常生活から姿を消していたポケットベル。その回線が防災に役立てられることになった。着信力の強さが、いざというときの伝達に力を発揮すると見込まれた。地震、津波、大雨……と日本列島を襲う災害は絶えることがない。旧態依然とした防災行政無線の見直しとともに、新たな対応策が模索されている。

 ポケベルの回線を防災ラジオに活用したのは神奈川県茅ケ崎市だ。隣り合う自治体との周波数割り当ての関係で出力(茅ケ崎市では0.5ワット)を大きくできない防災無線の情報をポケベル回線(100ワット)で伝えるほか、AMやFMも受信できる防災ラジオを開発した。昨年11月1日の市広報紙で防災ラジオの希望者を募り、22日から1台2000円で渡し始めた。製造費は約10000円かかっているため、差額は市が補助する。

 NTTドコモによると、女子高生をはじめ若者に流行したポケベルの契約数がピークだったのは1996年6月の649万件。携帯電話が普及するにつれて落ち込んだポケベルのサービスを、ドコモは2007年3月末に打ち切った。

 茅ケ崎市と防災ラジオを共同開発したのは、首都圏でポケットベルサービスを展開する東京テレメッセージ(東京都港区)。同社のもともとの出資者は、ポケベルが遠隔操作で通電できる機能に着目した東京電力とJR系の通信事業会社の日本テレコムだったという。しかし、業績が悪化した東京テレメッセージは99年に会社更生法を申請し、通信機器会社YOZANが2001年にポケベルとPHSの事業を引き継いだ。ところが経営破綻状態になり、08年に支援してきた米国系ファンド会社が経営の主導権を握り、会社分割してポケベル関連にしぼった事業を進めている。ポケベルの現在の利用者は、消防団や病院の10000人と東電の15000人にとどまっている。

 昨年6月に茅ケ崎市の防災ラジオ導入が報道されると、東京テレメッセージに全国の約20自治体から問い合わせがあったという。手ごたえを感じた同社は、首都圏の約300自治体にファクスで防災ラジオをPRした。清野英俊社長は「現在、ポケベルのサービスがあるのは首都圏と沖縄だけだが、着信力の強さを防災に生かしたい」と話している。

 南海トラフによる巨大地震の被害想定などが発表されるなか、財政状況が厳しい自治体でも防災分野については予算を増やす市町村が少なくない。国の補助金も目立っている。こうした動向も前に、東京テレメッセージ以外の新規参入もある。

 映像システムなどを施工する東和エンジニアリング(東京都台東区)は

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筆者

川本裕司

川本裕司(かわもと・ひろし) 朝日新聞社会部記者

朝日新聞社会部員。1959年生まれ。81年入社。学芸部、社会部などを経て、2006年から放送、通信、新聞などメディアを担当する編集委員などを経て、19年5月から大阪社会部。著書に『変容するNHK』『テレビが映し出した平成という時代』『ニューメディア「誤算」の構造』。

 

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