メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

 数年前、あるアイスショーに彼がゲスト出演したにもかかわらず、客席を満員にできなかったことがあった。当時、ゲストが浅田真央や高橋大輔、プルシェンコなどだったら、間違いなくチケットは飛ぶように売れていた、そんな状況だ。

 空いた客席を見た羽生結弦は、「自分がお客さんを呼べなくてすみません……」と、ショーの興行主に謝ったという。自分が何のためにそこに呼ばれているかを、彼は考え、自分ではその役割を担い切れなかったことを、如実に感じたのだ。そんなふうに羽生は、様々なことを考えもする。

世界選手権のフリーを終えて=2014年3月28日、さいたまスーパーアリーナ拡大世界選手権のフリーを終えて=2014年3月28日、さいたまスーパーアリーナ
 自分の今の役割を考え、一生懸命自分を作らなければならない。そのことでの彼の負担が、心配だ。そして人々は、「作ったもの」に対して意外に敏感だ。彼が必死にまわりに合わせ、作り上げた姿が真の羽生結弦ではないことを、人々は見抜きもするだろう。そこでまた、彼は苦しむことになるかもしれない。

 日本スケート界の宝であり、日本の宝である羽生結弦。彼ひとりにそんな苦しみを背負わせてしまって、いいのだろうか?

 羽生結弦にとって、またこれからの日本のスケート界にとって、必要なものは何か?

 それは、彼のライバルだ。

 ここで本稿1回目(「羽生結弦は浅田真央になれるか(1)――修正した『行方不明』のジャンプ」)の彼の言葉を振り返ってみたい。

 「僕が一番好きだったプルシェンコは、ヤグディンと戦ってたころのプルシェンコ」

 「僕にもそういうライバルが、絶対に現れるはずです。競ってくれるライバルがいなかったら、僕はスケートが好きではいられない」

 先の世界選手権では、羽生の手強いライバルとして町田樹が高らかに名乗りを上げたが、「羽生結弦を倒す男」は、もちろん彼だけではない。世界のライバルとして、パトリック・チャン(カナダ)、デニス・テン(カザフスタン)、ハビエル・フェルナンデス(スペイン)……いやいや、ここはやはり国内から、どんどん出てきてほしいところだ。

 羽生と同い年の、田中刑事、日野龍樹。さらに

・・・ログインして読む
(残り:約1163文字/本文:約2032文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

青嶋ひろの

青嶋ひろの(あおしま・ひろの) フリーライター

静岡県浜松市生まれ。2002年よりフィギュアスケートを取材。日本のトップ選手へのインタビュー集『フィギュアスケート日本女子 ファンブック』『フィギュアスケート日本男子 ファンブック Cutting Edge』を毎年刊行。著書に、『最強男子。 高橋大輔・織田信成・小塚崇彦 バンクーバー五輪フィギュアスケート男子日本代表リポート』(朝日新聞出版)、『浅田真央物語』『羽生結弦物語』(ともに角川つばさ文庫)、『フィギュアスケート男子3 最強日本、若き獅子たちの台頭 宇野昌磨・山本草太・田中刑事・日野龍樹・本田太一」(カドカワ・ミニッツブック、電子書店で配信)など。最新刊は、『百獣繚乱―フィギュアスケート日本男子―ソチからピョンチャンへ』(2015年12月16日発売、KADOKAWA)。

青嶋ひろのの記事

もっと見る