2014年06月04日
浅田真央のいないフィギュアスケートシーズンの始まり。それを、事象としてとても楽しみだと感じた。
浅田だけでなく高橋大輔も休養し、安藤美姫、鈴木明子、織田信成と多くのトップスケーターたちは引退。この「正念場」を、日本のフィギュアスケート界はどう乗り切るのか。
また3年前、同じように世界選手権を制した後の安藤美姫が休養を宣言したときには、「お休みするなんて」「真面目に続けている選手の方を応援したい」などという声が関係者にも多かったが、浅田の休養を彼らはどうとらえるのか。
彼女の今回の選択によって、ストイックな努力や継続を最上のものとする日本のスケート界、スポーツ界の風潮が少し変わればいいな、などとも思っている。
しかし、記者会見の日。
「今日は日本のフィギュアスケートのお葬式ですよ……」
そんな声をあげる記者もいたことは、少し悔しいと思った。浅田がいなければ、追いかける価値なし――極端だがそんなふうにこのスポーツが思われていることもまた、確かなのである。
冗談ではない!
これまで、世界選手権は少し遠い目標だった彼女たちが、今季は頑張ればひのき舞台に立てる可能性が大きいのだ。
仰ぎ見てきた先輩たちがいないのは寂しいだろうが、ここぞとばかりに日本女子は、次世代、若手選手たちが一気に伸びてくるに違いない、と楽しみにしている。そして願わくば、彼女たちの中からピョンチャンまでの4年間、また人々の目を氷上に釘付けにするスターが現れんことを。
「もちろん新しいスターは、生まれるかもしれない。でも真央みたいな存在は、もう出てきません。絶対に」
よってこれまでのような注目がフィギュアスケートに集まることはもう二度とないだろう、とくだんの記者は言う。まあ、なんと腹の立つことか。
もちろん12年ほど前、村主章枝、恩田美栄、荒川静香の背中を追いかけて、浅田真央、安藤美姫、中野友加里、太田由希奈らが続々と台頭してきたような、「これはものすごい時代が来る……」という予感は、現在の日本女子にはないかもしれない。
しかしよく似ていると思うのは、9年ほど前、トリノ五輪前の日本男子の状況だ。
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