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「できないな」と、浅田真央は言った(下)――日本女子の新しい時代へ

青嶋ひろの フリーライター

 浅田真央のいないフィギュアスケートシーズンの始まり。それを、事象としてとても楽しみだと感じた。

等身大のパネル写真と自分の身長を比べておどける浅田真央拡大等身大のパネル写真と並んだ浅田真央選手=2014年4月13日、東京都中央区の日本橋高島屋
 試合に出ない彼女は、この一年、メディアにどう取り上げられるのだろうか。

 浅田だけでなく高橋大輔も休養し、安藤美姫、鈴木明子、織田信成と多くのトップスケーターたちは引退。この「正念場」を、日本のフィギュアスケート界はどう乗り切るのか。

 また3年前、同じように世界選手権を制した後の安藤美姫が休養を宣言したときには、「お休みするなんて」「真面目に続けている選手の方を応援したい」などという声が関係者にも多かったが、浅田の休養を彼らはどうとらえるのか。

 彼女の今回の選択によって、ストイックな努力や継続を最上のものとする日本のスケート界、スポーツ界の風潮が少し変わればいいな、などとも思っている。

 しかし、記者会見の日。

 「今日は日本のフィギュアスケートのお葬式ですよ……」

 そんな声をあげる記者もいたことは、少し悔しいと思った。浅田がいなければ、追いかける価値なし――極端だがそんなふうにこのスポーツが思われていることもまた、確かなのである。

 冗談ではない! 

宮原知子.拡大宮原知子.
 女子では浅田、鈴木、さらに安藤が抜けて、今シーズン。世界選手権出場経験を持つ強化選手は村上佳菜子ただひとりとなった。もちろん世界選手権の日本女子3人枠は維持している。これは、彼女たちに続く選手たちにとっては願ってもない大チャンスだ。宮原知子、本郷理華、今井遥、大庭雅……。

 これまで、世界選手権は少し遠い目標だった彼女たちが、今季は頑張ればひのき舞台に立てる可能性が大きいのだ。

 仰ぎ見てきた先輩たちがいないのは寂しいだろうが、ここぞとばかりに日本女子は、次世代、若手選手たちが一気に伸びてくるに違いない、と楽しみにしている。そして願わくば、彼女たちの中からピョンチャンまでの4年間、また人々の目を氷上に釘付けにするスターが現れんことを。

 「もちろん新しいスターは、生まれるかもしれない。でも真央みたいな存在は、もう出てきません。絶対に」

 よってこれまでのような注目がフィギュアスケートに集まることはもう二度とないだろう、とくだんの記者は言う。まあ、なんと腹の立つことか。

 もちろん12年ほど前、村主章枝、恩田美栄、荒川静香の背中を追いかけて、浅田真央、安藤美姫、中野友加里、太田由希奈らが続々と台頭してきたような、「これはものすごい時代が来る……」という予感は、現在の日本女子にはないかもしれない。

 しかしよく似ていると思うのは、9年ほど前、トリノ五輪前の日本男子の状況だ。

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筆者

青嶋ひろの

青嶋ひろの(あおしま・ひろの) フリーライター

静岡県浜松市生まれ。2002年よりフィギュアスケートを取材。日本のトップ選手へのインタビュー集『フィギュアスケート日本女子 ファンブック』『フィギュアスケート日本男子 ファンブック Cutting Edge』を毎年刊行。著書に、『最強男子。 高橋大輔・織田信成・小塚崇彦 バンクーバー五輪フィギュアスケート男子日本代表リポート』(朝日新聞出版)、『浅田真央物語』『羽生結弦物語』(ともに角川つばさ文庫)、『フィギュアスケート男子3 最強日本、若き獅子たちの台頭 宇野昌磨・山本草太・田中刑事・日野龍樹・本田太一」(カドカワ・ミニッツブック、電子書店で配信)など。最新刊は、『百獣繚乱―フィギュアスケート日本男子―ソチからピョンチャンへ』(2015年12月16日発売、KADOKAWA)。

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