メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

[4] ”STAP細胞”報道とジャーナリズムのいま 「突っ込みが足りないテレビ報道にはがっかり」

尾関章、亀松太郎、堀潤

 尾関 まだまだお話はあって、最後の方で、またお二人にまとめの言葉をもらおうと思っているんですけど、この辺りで会場の皆さんから、いろいろなご意見を伺って、あるいは質問を伺って、それをもとに話し合っていきたいと思います。

会場からは積極的に質問が寄せられた拡大会場からは積極的に質問が寄せられた

政府や電力会社の見解を流し続けていないか

 会場 私は自分では何も発信していませんし、主にテレビと新聞と、あとは「WEBRONZA」も無料部分しか読んでないので、あまりこうした議論には詳しくないのですが、意見を述べさせてください。

 まず、「3.11」のときにすごく感じたことは、政府やマスメディアが言っていることは真実ではないのではないかと、私も世間も分かったと思うのです。でも、それを経て日本は少しは良くなっていくんじゃないかな、新聞やテレビももう少し本当のことを言うようになっていくのではないかなと、期待していました。でも、今はすごくがっかりしています。例えば、安倍首相が言ったことや、政府の発表に対して、なぜもっともっと突っ込まないのかなという不満でいっぱいです。

 一つだけ例を挙げますと、原発再稼働の安全性についてなんですが、そのとき主に安全といわれているのは、これから地震が来ても事故は起きないように対策を施すという面だけでしか安全が語られていない。でも、いま現実にはっきりしていることは福島第一原発で事故が起きたということと、そこはまだ危険で、今後も状況はもっと悪化していく可能性がある。つまり、福島第一原発はいまだに、安全ではないですよね。こういう目の前にある安全じゃないことについて全然語られていないと思います。

 もう一つだけ言いますと、TPP交渉の件です。安倍首相、政府が参加国との交渉に入るという決断をした時点で、「農業をしっかり守ります」、「絶対にしっかり守ります」としか言わなかった。とても抽象的です。何か語っているけれども、実は意味が何もないことも言えてしまう。そういうことについて、私がマスメディアに望んでいるのは、私たちの代わりにもっと突っ込んで、いろいろな情報や具体的な言質、見解を引き出すことです。それがあまりできてないのではないかというのが実感です。

 私はネットメディアをあまり細かくは見ていませんので、ネットではそうした突っ込みがマスメディアに代わってできているのかどうか分かりませんが、少なくとも職場とか知人とか周りの人たちと話をしていると、ほとんどの人はテレビのワイドショーとかニュースしか見ていないようです。私はほんの少しこうしたことに疑問をもつようになり、問題意識が芽生えてきて、こうしたイベントに来ましたが、とても少数派だと思います。そういう意味ではマスメディアには、もう少し頑張っていただけないのかなと思っています。

 尾関 はい。ありがとうございました。どうですか、何か反論なり、同意見であるというようなご意見があれば。

 亀松 何か突っ込みが足りないというのは、それは新聞に載っている記事とかテレビのニュース番組などについてですか。

 会場 すべての面でそう感じます。例えば原発でも、「安全だから再稼働します」という政府や電力会社による見解を流し続けるじゃないですか。でも、今だって福島は全然安全じゃないと私は思っているんです。

 亀松 ですから、メディアがそれに対して突っ込みが足りないというのは、そういう情報発信が足りないという意味ですか。

 会場 私が言っているような、そういう方向性で情報を発信する人がいないのではないかと思います。

政治家のような言葉づかいが空回り

 亀松 おそらくそうなのだろうと思うんですけど、ちょっと小保方さんの会見に引きつけて言うと、ある記者が、彼女の会見は科学者の会見じゃなくて政治家の会見だったと言っていました。政治家としての振る舞いとして考えると彼女は非常にうまかったというのですね。

 政治の言葉って結構そういうところがありますよね。あまり根拠とかは関係なく、要は「大丈夫なんです」と、自信を持って堂々としゃべることで国民を信頼させるというか、それで一つの方向に持っていく。こういうのは、政治の一つの役割でもあるのですね。安倍さんでいうと、やはり思い出すのが東京オリンピック招致の演説でしょう。原発事故の汚染水対策について、「アンダーコントロールです」と言い切りました。あれはやはり事実とは違うのだけれども、政治家としては非常にうまいなと思いました。

 ただ一方で、

・・・ログインして読む
(残り:約2567文字/本文:約4413文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

尾関章、亀松太郎、堀潤

尾関章、亀松太郎、堀潤 

尾関章(おぜき・あきら)
科学ジャーナリスト。1951年生まれ。早稲田大学大学院修士課程修了(専門は物理)。77年、朝日新聞社に入り、83年から科学記者。科学医療部長、論説副主幹などを務め、2013年に退社。宇宙論、素粒子物理、生命倫理などを主に取材した。WEBRONZA筆者。著書に『科学をいまどう語るか――啓蒙から批評へ』(岩波現代全書)、『量子論の宿題は解けるか』(講談社ブルーバックス)、『量子の新時代』(共著、朝日新書)。
亀松太郎(かめまつ・たろう)
1970年静岡県生まれ。東京大学法学部卒。朝日新聞記者として3年勤務した後、ネットベンチャーと法律事務所を経て、2006年からJ-CASTニュースの記者・編集者を経験。10年ドワンゴに転職、ニコニコニュース編集長として、ニコニコ動画の政治・報道番組の企画・制作とニュースサイト運営に携わる。13年1月独立。弁護士ドットコムトピックス編集長のほか、BLOGOSなどネットメディアを中心に活動している。
堀潤(ほり・じゅん)
ジャーナリスト/NPO法人「8bitNews」主宰。 1977年7月9日生まれ。兵庫県出身。 立教大学文学部卒業後、2001年にアナウンサーとしてNHKに入局。 「ニュースウォッチ9」、「Bizスポ」などの報道番組を担当。 2012年6月、市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げる。 2013年4月1日付でNHKを退局。近著に「変身~Metamorphosis メルトダウン後の世界」。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです