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[5]”STAP細胞”報道とジャーナリズムのいま 何をどう報じるかは自由、最後は受け手の問題

尾関章、亀松太郎、堀潤

 尾関 では次の質問です。どうぞ。

 会場 いくつかあるんですけれども、マスメディアの特にニュースが非常にエンターテインメント化していて、視聴率が取れるようなことだけをやっているような気がします。それであんまり見たくないなと最近思っているんですけど、一つは、僕らの声が届くようにするにはどうしたらいいのかなって、すごくそういう気がするんです。

会場からは熱心な質問が続いた=東京・池袋のジュンク堂書店池袋本店拡大会場からは熱心な質問が続いた=東京・池袋のジュンク堂書店池袋本店
 政治もそうですけど、特に東京キー局のニュース、例えば「NEWS WEB」などで、「Twitter」のつぶやきを画面の下の方に反映させるようなことが最近やられていますが、あのような断片的なつぶやきのレベルだけでは、不十分なのではないかと思っています。社会的なさまざまな意見というものを、どのようにしていけば番組にもう少しきちんと反映させられるのかという点について教えてもらいたいと思います。また、大手メディアというよりも、地方紙の方が結構頑張っているなというのが率直な感想で、そういうところをもっと支援していくようなのも必要なのかなと思っています。

 あとは、都知事選挙のときの報道でいうと、マスメディアでは脱原発のことがあまり争点になっていませんでした。ニュースで取り上げないうえ、世論調査の結果でも原発脱は争点として関心が高くない、と繰り返していたら、みんなそうなのかと思うでしょう。でも、ネット上では脱原発をめぐって、いろいろな議論が交わされ、僕もよく読んだり、書いたりしていました。この辺りのギャップをすごく感じていてるのですが、どうとらえているのかをお聞きしたいと思います。

 最後に、ネットでメディア的な活動をする側の教育的なことも議論になっていましたが、一次情報にあたるという重要性の問題です。たぶんマスコミ関係の方は一番大切なことだと思われているのでしょうが、普通の人だと、事実関係を確認しないで発信したり、共有したりと、どんどんやってしまっています。これはどうすべきなのか教えていただきたい。

 そういう教育的な側面が必要だと思いますが、普通の僕らのところでいうと、好きな情報だけをどんどんネットでいうと、とらえてしまって、その考え方だけに突っ込んでいっちゃうと傾向があると思うんですよね。そういうことについても何か教育的なアドバイスがあればお願いしたいと思います。

 尾関 盛りだくさんだったので、まとめてお答えするは難しいかもしれません。最初の質問だった自分たちの声を反映させるには、ということで言えば、堀さんが、まさに今日お話になりたいと言っていらっしゃったパブリックアクセスですか、そういう可能性は一つありますね。

パブリックアクセスの実現を

堀潤氏拡大堀潤氏

  そうですね。パブリックアクセスという言葉をご存じでしょうか。パブリックアクセスというのは、日本以外の先進国は法律で認められている放送や電波をめぐる権利なのです。国の資源であれば、国民は誰でも使う権利を有するわけですよね。水道とかガスとか、ああいったものは誰でも使えますよね。日本では水道を使う権利は国民に認められているんですけど、残念ながら、電波を使う権利は認められてないということです。でも、電波を使うことについては、「えっ、そんなこと権利なの」と驚かれるのではないでしょうか。

 イギリスやアメリカやヨーロッパ各国では、1960年代、70年代、80年代にかけて、これが法律で認められるようになりました。さっきまさに会場の方がおっしゃったことです。何でマスコミが報道することばっかり受信しなきゃいけないのかと。私たちが本当に報じてほしい、私たちが調べて、これを発信したいといったものを何で電波を使って言えないのかという欲求です。

 アメリカの場合だと、公民権運動があったときに、どうして白人や大企業の資本家たちに都合がいい情報ばっかり電波に流れるのかと、もっと有色人種の声をということが言われた。では、法律を変えましょうということになりました。テレビ局に映像を持ち込んだら流さなくていけないということですね。地元のケーブルテレビや公共放送が受け皿になりました。イギリスの場合はBBCですね。BBCがその受け皿になって、それ専用の時間を設けるわけですよ。編集権を切り離して、この1時間の番組はパブリックアクセスの時間ですと。

 そこに最後の質問にあった教育、啓蒙はどうするのといったときに、誰がやるかというと、BBCがやるんですね。パブリックアクセスを開放する代わりに、そのコンテンツを作るスキルは私たちBBCが一生懸命サポートしましょうと。だから「ワークショップをやりましょう」、「カメラマンが必要だったら呼んでください」、「ディレクターも派遣しますよ」ということになっていた。これが今日の公共放送の役割なんですね。

 これは韓国のKBSもやっています。アメリカのPBSもやっています。だからNHKがやらなきゃいけないというのは僕の主張です。でも、NHKでやるにはしばらく時間がかかりそうだったので、

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筆者

尾関章、亀松太郎、堀潤

尾関章、亀松太郎、堀潤 

尾関章(おぜき・あきら)
科学ジャーナリスト。1951年生まれ。早稲田大学大学院修士課程修了(専門は物理)。77年、朝日新聞社に入り、83年から科学記者。科学医療部長、論説副主幹などを務め、2013年に退社。宇宙論、素粒子物理、生命倫理などを主に取材した。WEBRONZA筆者。著書に『科学をいまどう語るか――啓蒙から批評へ』(岩波現代全書)、『量子論の宿題は解けるか』(講談社ブルーバックス)、『量子の新時代』(共著、朝日新書)。
亀松太郎(かめまつ・たろう)
1970年静岡県生まれ。東京大学法学部卒。朝日新聞記者として3年勤務した後、ネットベンチャーと法律事務所を経て、2006年からJ-CASTニュースの記者・編集者を経験。10年ドワンゴに転職、ニコニコニュース編集長として、ニコニコ動画の政治・報道番組の企画・制作とニュースサイト運営に携わる。13年1月独立。弁護士ドットコムトピックス編集長のほか、BLOGOSなどネットメディアを中心に活動している。
堀潤(ほり・じゅん)
ジャーナリスト/NPO法人「8bitNews」主宰。 1977年7月9日生まれ。兵庫県出身。 立教大学文学部卒業後、2001年にアナウンサーとしてNHKに入局。 「ニュースウォッチ9」、「Bizスポ」などの報道番組を担当。 2012年6月、市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げる。 2013年4月1日付でNHKを退局。近著に「変身~Metamorphosis メルトダウン後の世界」。