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差別者で嘘つき、鈴木都議は辞職すべし

澁谷知美 東京経済大准教授(社会学)

 東京都議会で質問中の塩村文夏都議にたいし、「早く結婚した方がいいんじゃないか!」と女性差別発言――この記事では「セクハラ発言」「セクハラやじ」といった言葉はあえて用いない。理由はのちに説明する――をした鈴木章浩都議。ネット住民、マスコミによる総力あげての犯人さがしで目星をつけられたのち、観念したのか、やっと名乗りでた。

 本人は辞職するつもりはないという。が、鈴木都議に辞職以外のチョイスはない。都議会や自民党は、全力で彼を議会から追放せねばならない。市民も全力で辞職を要求していかなければならない。なぜか。理由は第一に、鈴木都議が差別者だからである。第二に、嘘つきだからである。差別者の嘘つきを市民の生活を預かる都議会に置いておくことはできない。
 とはいえ、あまりピンとこない読者もおられると思う。とくに「差別者ってのは言いすぎでは」という人もいるかも。以下に説明する。

れっきとした性差別

 第一の「差別者である」とはどういうことか。鈴木都議がしたことは、れっきとした女性差別である。このことを早くから指摘していたのは、ライターの松沢呉一であった。松沢は、もともとは「セクハラ」も重い意味を持っていたが、軽い意味に変えられてしまった現実を前提としながら、次のようにいう。「『女性差別発言』『性差別発言』と『セクハラ』とどっちが内容を正しく表現していて、どっちが重いと感じるでしょうか。私は圧倒的に前者です。「セクハラ」になると腰がくだける。飲み屋のエロ話みたいなもんかと」(注1)。また、英国ガーディアン紙は、「Sexist Abuse(性差別者による暴言)」という言葉を使い、「Sexual Harassment(セクシュアル・ハラスメント)」という言葉は使っていない。事態の深刻さにあわせた言葉のチョイスをしている(注2)。

 ではなぜ、鈴木都議の「早く結婚した方がいいんじゃないか!」は女性差別になるのだろうか? 塩村都議が質問中に、投げつけるように鈴木都議が発したこの言葉が女性差別であることを理解するには、同種の言葉が持つ「侮辱」の機能を思いおこせばよい。

 「からかい」について考察した社会学者の江原由美子によれば、一般に社会的に劣位に立つとされている人びとは、まったく見知らぬ者の「からかい」を受けやすい立場にある。からかう側が、悪意や攻撃の意図を持っていることはまれで、むしろ「親密性」の表明としてからかうことが多い。

 しかし、その「からかい」は「投げかけられた側」を非常に怒らせることがある。なぜなら、それは「投げかけられた側」の意思を無視して投げかけられるからである。そして、意思を無視してよいという判定を見知らぬ他人がしたということ自体が、「投げかけられた側」を劣位者として軽侮したことのあかしだからである。

 「このことは逆に、他者を侮辱する手口として『利用』される。さほど親しくない他者、または、見知らぬ他者に対し、親しげな愛称や呼称で呼びかけること自体が、はっきりと侮辱の意図を伝えるのである」(注3)

 塩村都議と鈴木都議は「まったく見知らぬ者同士」ではないにせよ、「さほど親しくない間柄」であろう。そのような関係において、投げつけるような調子で発せられた、プライベートにかかわる言葉「早く結婚した方がいいんじゃないか!」は、上記の「からかい」とまったく同じ機能を持っている。つまり、塩村都議の意思を無視した投げかけであり、「塩村都議の意思を無視してよい」という鈴木都議の判定の表明であり、そのことによって侮辱の意図を伝える機能を持っている。

 この言葉が女性差別であるといえるのは、もっぱら女性を貶める目的で同種の言葉が「利用」されてきた長い歴史があるからだ。「いかず後家」「嫁き遅れ」という言葉が日本語として定着しているていどには、この種の女性差別は日本社会にがっちりと組みこまれ、構造化されている。そして、数えきれないほどの女性たちが、「これさえ言われなければ、平穏に暮らせたはずの今日」を奪われてきた。

 鈴木都議の最大の罪は、このすでにある構造化された性差別を「利用」したことにある。ヤジ=差別、ではない。ヤジるのであれば、あまたある言葉の在庫から、差別につながらないものを拾うこともできた。しかし、鈴木都議は差別として帰結するほかない言葉を【わざわざ】選んだのである。相手を萎縮させ、自分の「すごさ」を周囲にアピールするヤジの道具として、差別を「利用」したのである。

 しかも、「軽い思いで」(鈴木都議。注4)発言したというのだから、よけいに悪い。「軽い思い」で差別されたんじゃ、女はたまったものではない。やすやすと人を差別する男に、多様な性や民族の人びとが暮らす東京都の政治を任せることはできない。彼を都議会から追放するしかないというのは、こういう理由である。

 なお、「公正な社会」実現のためには、たとえ塩村都議がそれを望んでいないとしても、鈴木都議を辞めさせなければならないことを付言しておきたい。というのも、ふたたび松沢によれば、「『セクハラ』は対個人の問題。『女性差別』は対個人を含みつつも、もっぱら対社会の問題。法律で言えば個人的法益と社会的法益の違い」があるからで、「仮に言われた都議がまったく気にしていなくても」女性差別は成立しているからである(注5)。

 つまり、鈴木都議は性差別者であり、このまま議員を続けさせてしまえば、「謝れば、差別者でも市民生活を左右するような重要な仕事をしてもよい」と社会にメッセージしてしまうことになる。すでにして公人による性差別、民族差別が横行している日本で、それは困る。なんとしても辞めさせるべしと筆者が主張する理由はここにある。

嘘が習い性になっている

 鈴木都議を辞めさせなければならない理由の第二は、鈴木都議が嘘つきだからである。鈴木都議は「犯人さがし」がさかんだった頃のマスコミ取材にたいし、「自分ではない」と答えていた。その様子は動画サイトで見ることができる。また、会派からの聞き取り調査においても虚偽の報告をしていた(注6)。

 今後も議員活動で保身のために嘘をつくことが予想される。というより、大田区議時代に、他人の文章を盗用して ・・・ログインして読む
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筆者

澁谷知美

澁谷知美(しぶや・ともみ) 東京経済大准教授(社会学)

東京経済大准教授。1972年大阪市生まれの千葉県育ち。東大大学院教育学研究科博士課程修了。専門は社会学および教育社会学、主な研究テーマは男性のセクシュアリティの社会史。単著に『日本の童貞』『平成オトコ塾 悩める男子のための全6章』『立身出世と下半身 男子学生の性的身体の管理の歴史』、共著に『性的なことば』などがある。【2015年6月WEBRONZA退任】

 

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