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お年寄りの住みやすい都市の条件

大矢雅弘 朝日新聞天草支局長

 英国の情報誌「モノクル」が発表した2014年の「世界で最も住みやすい25の都市ランキング」で福岡市が10位に入り、初めてトップ10入りしたというニュースは、地元住民を喜ばせたにちがいない。

 暮らしやすさに主眼を置いた独自の評価基準によるランキングのようだが、日本が超高齢化社会へと進むなか、例えば、「お年寄りの住みやすい都市」といった条件で自治体を比べてみるとするなら、どんな評価基準が選ばれるだろうかと考えてみた。

 まずは、明日は我が身という意識を持たざるを得ない認知症の問題がある。認知症のあるお年寄りが毎年、およそ1万人が行方不明になっている。この問題に地域でどう取り組んでいるかは、「お年寄りが住みやすい都市」であると認められるためには、欠かすことのできない評価基準になるのではないか。

 認知症になっても安心して暮らせるために「安心して徘徊(はいかい)できる街」をめざしているのが福岡県大牟田市だ。大牟田市では、徘徊して行方がわからなくなった認知症高齢者を連携して捜索・保護する仕組みをつくり、すでに十数年の蓄積がある。

 認知症と並んで「介護地獄」を生み出す2大要因になっているのが排泄問題だという。

 高齢になると、尿が漏れたり、回数が増えたりといった排尿障害(正式には尿失禁)に悩む人が増える。尿漏れや頻尿に悩む高齢者は約400万人と推定され、このうち、万一に備えておむつをつけている人が200万人、おむつでいつも排泄している人が100万人いるという話を数年前に聞いた。そうした排泄障害の悩みを抱えていながら、泌尿器科を受診する人は1割にも満たないと専門家はみている。「しもの話は恥ずかしい」という意識があるからだ。

 この排泄問題に、ほかの自治体に先駆けて取り組んでいるのが北九州市だ。北九州市の12年度末の高齢化率は25・5%で、政令指定市では最も高い。そんな現状を逆手に取った取り組みともいえる。

 07年12月に政令指定市では初めて、高齢者の排泄にかかわる電話相談を受ける「さわやか相談ダイヤル」(0120・54・0620)を設けた。北九州市では、行政が地元の泌尿器科医や理学療法士、看護師などと広く連携して、地域総力戦とでも形容できるような体制で排泄ケアに取り組んでいるのが、なによりの特徴だ。

 排尿障害に対してはこれまでは年齢のせいにされ、おむつが使われるという対応が多かった。だが、一度、おむつが使われるようになると、その後も漫然と続けられる傾向にある。そのことを実感したのは以前、熊本県玉名市の特別養護老人ホーム「慈幸苑」で聞いた話だ。

 慈幸苑は「抑制なし、睡眠剤なし、鍵なし」の「3無い」を基本にしている。おむつをあてるのも抑制になるとして、24時間のおむつ外しを入所者全員に実行している。

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筆者

大矢雅弘

大矢雅弘(おおや・まさひろ) 朝日新聞天草支局長

1953年生まれ。長崎、那覇両支局、社会部員、那覇支局長、編集委員。その後、論説委員として沖縄問題や水俣病問題、川辺川ダム、原爆などを担当。2016年5月から現職。著書に『地球環境最前線』(共著)、『復帰世20年』(共著、のちに朝日文庫の『沖縄報告』に収録)など。

 

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