潮智史(うしお・さとし) 朝日新聞編集委員
朝日新聞編集委員。1964年生まれ。87年入社。宇都宮支局、運動部、社会部、ヨーロッパ総局(ロンドン駐在)などを経て現職。サッカーを中心にテニス、ゴルフ、体操などを取材。サッカーW杯は米国、フランス、日韓、ドイツ、南アフリカ、ブラジルと6大会続けて現地取材。五輪は00年シドニー、08年北京、12年ロンドンを担当。著書に『指揮官 岡田武史』『日本代表監督論』。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
11日のサッカー日本代表監督就任記者会見で、アギーレ監督の口からは華やかな言葉は出てこなかった。
メディアが飛びつきがちなキーワードも特にはなし。目標についても「W杯ロシア大会への出場」にとどめた。自分をひときわ大きく見せるようなこともなく、それだけ自信を持っていることをうかがわせた。会見場は新鮮な期待感に満ちていたように思う。
1時間に及んだ会見をまとめると、代表チームへの忠誠や献身、力を尽くすといった印象だった。「自身のサッカー哲学は?」という問いには、「とにかく走ること。いいプレーをして勝つこと。これに尽きる。国を背負ってプレーしていることを肝に銘じてやってほしい」。戦術だとか、スタイルだとか、あるいはシステムがどうだとか、そんなことよりもまずはピッチの上で必死になって戦うというメッセージを自身と選手に投げかけた。
歴代の代表監督の中でも、世界的な実績を最も豊富に持つひとだといっていいだろう。選手、コーチ、監督として計4回、W杯に出場している。いずれも母国メキシコ代表としてだった。
そのメキシコは、日本のサッカー界が置かれた環境や状況と共通点が多いとされて、近年注目を浴びてきた国のひとつだ。
欧州、南米の2大勢力に対して、メキシコの所属する北中米・カリブ海のレベルは低い位置にある。その中で、ライバルとなる強豪米国とリーダー争いを続けてきた歴史は、アジアにおける日本と極めて似通う。
代表選手が欧州に出ていく一方で、国内リーグを中心に選手育成の重要度が相対的に増している環境も