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錦織の「ハングリー」にいま踏み込むべき日本

倉沢鉄也 日鉄総研研究主幹

 全米オープンテニス、錦織圭選手、シングルス準優勝。この事実はこの3年くらいのどこかで見ることのできるものだと、ある種無理やり思い込みながら錦織についての論考を、五輪の金メダルよりもずっと険しい道であることの理解を促す意味合いも込めてWEBRONZAに投じてきた。今季前半の状況(トップ10を突破しつつも怪我の繰り返し)、大会前の足指の手術予後の状況、も含めて現実に今年これを体験できるとは思っていなかった。

 筆者がこれまで繰り返しスポーツについて論じていたのと同様、「潜在力は世界中で認められながらも現時点で客観的には優勝候補とまでは言いきれない、10年以上フロリダに拠点を置くグローバル・アスリート、K.NISHIKORI」が、やっと歴史に名を残す(四大大会準優勝のトロフィーには永久に名前が刻まれる)結果を出したことを素直に喜びたい。そして個人的には、東京大会(楽天ジャパンオープン)のプレスルーム等で何度か顔を合わせた、二十数年分の肥満を差し引いてもなお筆者より華奢な体格の青年が、筆者も青春の大部分を費やした競技の世界で、史上最強の日本人選手として頂上の舞台の主役となったことの幸せを、生きているうちに観ることができてよかったと思っている。

 さて、この件をめぐる報道の「祭り」がひととおり終わって、なぜここまで勝ち上がれたのかに関するスポーツ・ジャーナリスティックな論考・コメントは膨大にあり、的を射たものも多い。優勝に必要な7試合×5セットマッチを耐えるフィジカルの強化にめどがついた(このトレーニングで優勝に十分だということ)こと、その自信に裏打ちされたメンタルの強化(相手の肩書や外部環境への無感覚化)、それらの帰結として実現した分厚い攻撃的ショットの連続(エアケイもジャックナイフも不要!)、その最大のきっかけとなったコーチのマイケル・チャン氏(あくまでサポートチームの1人)の存在、それらの積み上げの結果である「ファイナルセット勝率77%は現時点史上1位、直近までの52週間でも83%で世界1位のノバク・ジョコビッチ選手に次ぎ2位(いずれも2014年全米開幕前週まで)」の勝負強さ、の指摘と具体的な取り組み状況の取材情報は十分に世に提供されている。

 勝負強さについては、

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